スウェーデンといえば、高福祉、高教育、美しい自然、そして洗練された人々…まるで北欧の理想郷のようなイメージを抱く人は多いのではないでしょうか。しかし、近年、この理想郷に暗い影が落ちています。深刻化する犯罪問題、特に銃犯罪や組織犯罪の増加は、スウェーデン社会に大きな不安をもたらしています。今回は、その実態と背景を探ります。
理想郷の崩壊？急増する凶悪犯罪
かつて「世界一寛大な移民政策」を掲げ、多くの難民を受け入れてきたスウェーデン。しかし、その寛容さが裏目に出ている現状があります。統計によると、2023年には銃撃事件による死者数が53人に上り、イギリスのイングランドとウェールズにおける総数を上回りました。人口比で考えると、日本の年間死者数は620人を超える計算となり、その深刻さが浮き彫りになっています。
スウェーデンの首相ウルフ・クリスターソン氏
さらに、爆破事件も多発しており、2023年には149件もの事件が報告されています。これらの犯罪の多くは、移民または移民二世によるものとされており、社会不安を増大させています。スウェーデン警察によれば、殺人容疑で捜査されている15歳以下の子供が93人もいるという衝撃的な事実も明らかになっています。
移民政策が生んだ歪み
過去25年間でスウェーデンが受け入れた外国人は227万人に達し、現在では国民の2割が移民となっています。急激な移民の流入は、社会の統合を困難にし、犯罪の温床となる危険地区の形成につながっています。これらの地域では、警察も容易に立ち入ることができず、犯罪組織が蔓延しているのが現状です。
犯罪組織は、麻薬や武器の密売、人身売買など、様々な犯罪に関与しており、近年では殺人の請負まで行っているという報道もあります。イギリスの新聞「ザ・タイムズ」は、スウェーデンの犯罪組織が若い殺し屋をスカンジナビアの隣国に送り込んでいると報じており、犯罪の国際化も懸念されています。
犯罪の背景にある社会問題
専門家の間では、スウェーデンの犯罪増加の背景には、移民政策だけでなく、社会格差の拡大や若者の貧困、教育格差などの社会問題が複雑に絡み合っているという指摘があります。「北欧社会研究所」のヨハンソン氏（仮名）は、「移民の社会統合を促進するための教育や雇用支援が不十分であり、それが犯罪につながる一因となっている」と述べています。
スウェーデンの未来はどこへ
スウェーデン政府は、犯罪対策強化のために警察官の増員や厳罰化を進めていますが、根本的な解決には至っていません。真の「理想郷」を取り戻すためには、移民政策の見直しだけでなく、社会全体の包摂性向上や格差是正といった、長期的な視点に立った取り組みが必要不可欠です。
スウェーデンの街並み
スウェーデンの現状は、私たちに多くの課題を突きつけています。多文化共生社会の実現には、寛容さだけでなく、社会の秩序と安全を確保するための適切な制度設計と、社会全体の理解と協力が不可欠であることを改めて認識させられます。
