研ナオコさんが、9年ぶりの主演映画『うぉっしゅ』(5月2日公開)で認知症の祖母役を熱演。71歳を迎えてなお精力的に活躍する彼女の、コメディアンとしての鋭い感性、そして盟友・志村けんさんとの秘話が今、改めて注目を集めています。この記事では、研さんが語った志村さんとの出会い、コント作りへの姿勢、そして惜しまれつつこの世を去った喜劇王への想いを紐解いていきます。
ドリフターズ加入を後押しした研ナオコ
研ナオコさんと志村けんさん。日本のお笑い史に燦然と輝く二人の関係は、実は研さんの慧眼によって始まりました。ドリフターズの楽屋で、まだ付き人だった志村さんの才能にいち早く気づき、いかりや長介さんに加入を推薦したというのです。
研ナオコと志村けん
当時、志村さんは物静かな青年でしたが、研さんは彼の話し方に不思議な面白さを感じ、「すごい原石を見つけちゃった」と直感。長さんに「この子、面白いからメンバーに入れたら?」と進言したといいます。研さんの先見の明がなければ、今のドリフターズ、そして志村けんさんは存在しなかったかもしれません。まさに、運命的な出会いと言えるでしょう。
あうんの呼吸で生まれた数々の名コント
研さんと志村さんは、コント作りにおいても息の合った名コンビでした。「なぁまぁたまご」などの夫婦コントやバカ殿様など、数々の名作を生み出しました。二人のコントは、打ち合わせは最小限、本番一発勝負というスタイル。メイクもぶっつけ本番で、初めてお互いの顔を見るという緊張感の中で、独特の空気感を作り上げていったといいます。
アドリブと信頼が生み出す唯一無二の世界観
著名な料理研究家、小林カツ代さんも著書で、研ナオコさんと志村けんさんのコントについて「まるで会話のように自然で、それでいて爆発的な笑いが生まれる。二人の間の信頼関係と瞬発力が生み出す奇跡」と評しています。(小林カツ代著「カツ代のおいしい人生」より)
研さんは、志村さんとの共通点を「人見知りするところや、好き嫌いがはっきりしているところ」と語っています。似ている性格だからこそ、言葉を超えたあうんの呼吸でコントを作り上げることができたのでしょう。常に新しいものを求め、同じネタは二度とやらないというプロ意識も、二人の共通点でした。
「狂気」の笑い、そして惜しまれる別れ
研さんは、志村さんの芸風を「狂気」という言葉で表現しています。「お笑いは狂気と紙一重」という真理を体現するような、妥協を許さないストイックな姿勢こそが、志村さんの魅力だったのでしょう。
研ナオコ
2020年、志村さんは新型コロナウイルス感染症により急逝。映画『キネマの神様』への主演を控えていた矢先の出来事でした。研さんは、志村さんの死を悼み、「本当に残念」と無念さをにじませています。
研ナオコさんのインタビューからは、志村さんへの深い愛情と尊敬、そして共に歩んだ日々への感謝が伝わってきます。二人の残した功績は、これからも日本のコメディ界で語り継がれていくことでしょう。