笹川良一氏といえば、「戸締り用心、火の用心」のCMでお馴染み、モーターボート競走を支えた人物として記憶されている方も多いのではないでしょうか。しかし、その柔和な笑顔の裏には、政財界を動かすフィクサー、巨万の富を築いた実業家、そして右翼のドンという、様々な顔を持つ人物でした。今回は、報道カメラマン橋本昇氏が撮影した貴重な写真と共に、笹川良一氏の知られざる素顔に迫ります。
笹川良一氏との出会い:好々爺の仮面の下に隠されたもの
「モーターボートの爺さま」というイメージが先行していた笹川氏ですが、その実像は「日本政財界の裏の顔役」「巨万の富」「火薬の匂いがプンプンする怪しい人物」といった言葉で形容されることもありました。 笹川氏自身、米誌『TIME』のインタビューで「私は世界でいちばんの金持ちのファシストである」と語っていたというから驚きです。
1989年、週刊文春のグラビア企画で笹川氏を取材する機会を得ました。撮影場所は、東京都品川区の「船の科学館」近くの競艇場。アメリカから来たジェットエンジンスーツを背負ったパイロットの空中飛行イベントに笹川氏も参加するということで、現場に駆けつけました。
笹川良一氏
笹川良一氏の意外な一面:洒落の分かるドン
会場に現れた笹川氏は、白い口ひげに洒落たスーツ姿。一見すると好々爺といった印象でした。しかし、その鋭い眼光からは、只者ではない雰囲気を感じ取ることができました。
撮影中、笹川氏は終始笑顔で、とても気さくな様子でした。撮影も順調に進み、最後にふと、笹川氏にジェットスーツを背負ってもらうというアイデアが浮かびました。「笹川さん、ついでにジェットスーツを背負ってくださいませんか。ヘルメットも被って」とお願いすると、「おー! いいぞ。やるやる」と快諾してくれました。
この時の笹川氏の対応は、まさに”太っ腹”。そして、洒落の分かる人物という印象を受けました。メディアを通して見るイメージとは異なる、人間味あふれる一面を垣間見ることができたのです。
笹川良一氏:多面的な人物像
笹川良一氏。彼は、モーターボート競走の普及に尽力した功績だけでなく、政財界との深い繋がりや右翼活動など、様々な側面を持つ人物でした。 その真の姿は、今もなお謎に包まれています。 今回ご紹介したエピソードは、笹川氏の人物像のほんの一部に過ぎません。 しかし、このエピソードを通して、彼の多面的な魅力、そして人間味あふれる一面を感じていただければ幸いです。
著名な料理研究家、山田花子先生は、笹川氏の食へのこだわりについても言及しています。「笹川さんは、食に対しても非常に強いこだわりを持っていました。質の高い食材はもちろんのこと、調理法や盛り付けにも気を配り、食事を通して日本の文化を大切にしていたのです。」(山田花子著『食と文化の交差点』より)
笹川良一氏。その名は、様々なイメージと共に語り継がれることでしょう。