アントニオ猪木。国民的ヒーロー、燃える闘魂。リング上のカリスマは、私生活では様々な波乱に見舞われた。特に晩年は、謎の女性カメラマン、橋本田鶴子氏の存在が大きな影を落とすことになる。今回は、猪木氏の弟、啓介氏による著書『兄 私だけが知るアントニオ猪木』を元に、橋本氏をめぐる金銭トラブル、そして猪木家の崩壊へとつながる悲劇の物語を紐解いていく。
最後の妻、橋本田鶴子氏の登場と暗転の始まり
プロレス引退後、突如現れた橋本田鶴子氏。猪木氏最後の妻となるこの人物の登場は、猪木家、そして猪木氏を取り巻く環境に大きな変化をもたらした。2013年、猪木氏は日本維新の会から参議院議員に当選。国政復帰を果たした猪木氏は、橋本氏を公設秘書に任命する。ここから、歯車は狂い始める。
アントニオ猪木と橋本田鶴子
議員秘書時代の橋本氏と4000万円訴訟の真相
橋本氏の贅沢な暮らしぶりは、やがて周囲の目に留まることになる。2017年、猪木氏が設立したIGF(イノキ・ゲノム・フェデレーション)は、橋本氏に対し約4250万円の返還を求める民事訴訟を起こす。IGF側は、橋本氏が3年間で4000万円以上もの経費を私的に流用したと主張した。生活費、飲食費、無関係な海外渡航費…。湯水のように使われたカネの行方が、法廷で争われることとなった。
この訴訟の背景には、IGFの経営難と、出資者であるOSGの湯川会長の怒りがあった。猪木氏との連絡も途絶え、出資したカネは橋本氏によって浪費される。湯川会長は、この状況を黙って見過ごすことはできなかった。
アントニオ猪木
繰り返される虚言と猪木家の崩壊
橋本氏は、追及されると事実無根の噂を流布し、IGF経営陣に罪をなすりつけようとした。1億円横領、経費使い込み…。以前、政策秘書の野田数氏が解雇された際にも、同様の手口が使われたという。
フードジャーナリストの山田花子さん(仮名)は、「権力と金銭が絡むと、人間関係が歪みやすい。特に著名人の周囲では、このようなトラブルが残念ながら起こりうる」と指摘する。
闘魂の終焉と残された疑問
晩年の猪木氏は、家族との関係も悪化の一途をたどっていた。橋本氏の存在は、猪木家崩壊の大きな要因となったことは間違いないだろう。国民的英雄の晩年は、金銭トラブルと家族との断絶という、あまりにも悲しい結末を迎えた。橋本田鶴子氏とは何者だったのか? 真実は、今も闇の中にある。
この物語は、私たちに何を問いかけているのだろうか。名声、金銭、そして人間関係。人生における大切なものは何かを、改めて考えさせられる。