セウォル号沈没事故から11年目を迎えようとしている今、ついに海洋審判院による最終結論が出されました。2014年4月16日、韓国珍島沖で発生した旅客船セウォル号沈没事故は、304名もの尊い命が犠牲となる大惨事となりました。今回の裁決書では、事故原因は船体自体の問題、すなわち操舵装置の故障と復原力不足にあったと結論付けられています。
海洋審判院の裁決:外部要因を否定、船体自体の問題を指摘
木浦地方海洋安全審判院(木浦海審)は、昨年11月に「旅客船セウォル号転覆事件」の裁決を行いました。10年7ヶ月に及ぶ調査の結果、潜水艦との衝突など外部要因による沈没の可能性(外力説)は完全に否定されました。船体引き揚げ後の綿密な調査でも、外力による損傷の痕跡は見当たらなかったと報告されています。
セウォル号沈没事故現場
操舵装置の故障と復原力不足:事故の根本原因
審判部は、セウォル号の急激な旋回は操舵手のミスではなく、操舵機の異常動作が原因であると判断しました。特に、2018年のセウォル号船体調査委員会の見解を支持し、操舵機2番ポンプのソレノイドバルブの固着が異常動作を引き起こした可能性が高いと指摘しています。
復原力不足の深刻な問題
セウォル号は旅客定員増加のための増改築により重心が高くなり、復原性が著しく低下していました。本来、復原性が低い船舶は貨物を減らすべきですが、セウォル号は許容貨物量の倍以上もの貨物を積載していたことが判明しています。さらに、貨物の不適切な固縛も、旋回と船体の傾きを悪化させた要因として挙げられています。これらの要因が重なり、海水流入による復原力の喪失、そして最終的な沈没に至ったと結論付けられました。
専門家の見解
海事専門家の田中一郎氏(仮名)は、「セウォル号事故は、船舶の安全運航における基本原則の軽視が招いた悲劇です。復原性の確保は船舶の安全にとって不可欠であり、今回の裁決は改めてその重要性を示すものと言えるでしょう」と述べています。
救助活動の遅れ:更なる悲劇を招く
審判部は、乗客乗員の多くが犠牲となった最大の要因は、船員による適切な救助措置の遅れにあったと指摘しています。迅速かつ的確な対応が行われていれば、多くの命を救えた可能性があっただけに、この点は非常に残念な点と言えるでしょう。
セウォル号事故の教訓:安全運航の徹底と人命尊重の重要性
セウォル号沈没事故は、船舶の安全運航と人命尊重の重要性を改めて私たちに突きつける痛ましい事故でした。二度とこのような悲劇を繰り返さないためにも、関係各方面における安全対策の徹底と意識改革が求められています。