東南アジアを拠点とする特殊詐欺が深刻化しています。ミャンマー国境の拠点が注目を集めていますが、以前はフィリピンが中心地でした。この記事では、フィリピンに残る元犯罪拠点の実態と、中国系犯罪組織の手口を詳しく解説します。
マニラ中心部に残る犯罪拠点の現状
元POGO拠点のカラオケラウンジ。華やかさの影に犯罪の闇が潜んでいた。
2025年2月、マニラ中心部に位置する元犯罪拠点を訪れました。かつて政府公認のオンラインカジノ「POGO」として営業していたこの施設では、約730人が監禁され、特殊詐欺に加担させられていました。1階にはカラオケラウンジやカジノルームが並び、成功すれば娯楽を許され、失敗すれば制裁が待っているという、アメとムチを使い分ける巧妙な支配が行われていました。奥まった部屋には、血痕が残る壁や手錠のレールなど、当時の生々しい状況を物語る痕跡が今も残っています。
中国系犯罪組織の巧妙な手口
フィリピン組織犯罪対策委員会のカシオ報道官によると、中国系犯罪組織は「暴力と誘惑を巧みに使い分けて支配する」のが特徴です。「高額報酬」「渡航費無料」といった甘い言葉で外国人を誘い込み、パスポートを取り上げて厳しい監視下で働かせます。逃亡を試みれば暴力を振るい、従順な者には一時的な優遇を与えるなど、心理的な支配も巧みです。
POGOの急拡大と闇
POGOは、ドゥテルテ前大統領が税収増を期待して規制緩和を行ったことで急拡大し、一時は国内に10万カ所近く存在しました。主に中国人向けのオンラインカジノを運営する一方で、ロマンス詐欺などの拠点としても機能していたのです。犯罪組織にとって、POGOは格好の隠れ蓑となっていました。
いたちごっこの現実と対策の必要性
カシオ報道官は、「ある国で取り締まりが進んでも、別の国で再び拠点が生まれる」と指摘します。犯罪組織は、取り締まりが厳しくなると姿を消し、別の場所で活動を再開するのです。このいたちごっこを終わらせるためには、国際的な協力と効果的な対策が不可欠です。東南アジア諸国が連携し、情報共有や捜査協力体制を強化することで、犯罪組織の撲滅を目指していく必要があります。