マルセイユ・プロヴァンス空港で30年間勤務していた職員が、売れ残ったサンドイッチをホームレスに配ったことで解雇され、波紋を広げています。食品ロス削減の観点から賞賛されるべき行為か、それとも企業規定違反なのか、複雑な問題を提起しています。
廃棄寸前のサンドイッチ、ホームレスへの善意が解雇の引き金に
フランス南部のマルセイユ・プロヴァンス空港で、長年勤務していたAさんが解雇されたのは、売れ残って廃棄寸前のサンドイッチをホームレスに配ったことが原因でした。Aさんは、スターバックスやプレタ・マンジェなどの外食ブランドを運営するSSPグループの職員として、空港内でカウンター業務や飲料製造を担当していました。
閉店後、廃棄される予定のサンドイッチなどを回収し、空港内のホームレスに配っていたAさん。時には清掃員や警備員にも提供していたといいます。Aさんは、これらの行為は空港内の監視カメラがある公開の場で行われており、上司も事実を認識していたと主張しています。
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企業側は規定違反を主張、Aさんは労働委員会に異議申し立て
一方、SSPグループ側は、Aさんの行為は企業規定違反だと主張。職員が廃棄予定の食品を勝手に持ち出すことは許されず、廃棄物処理容器に捨て、損失を在庫管理システムに記録する必要があるとしています。
Aさんは、自分の行動が規定違反だとは考えていなかったと語り、労働委員会に異議を提起しました。突然の解雇に驚きながらも、食品ロスを減らし、困っている人々に手を差し伸べた自分の行動を誇りに思っているといいます。
食品ロス問題と企業の社会的責任、議論を呼ぶ解雇劇
この事件は、食品ロス問題と企業の社会的責任について改めて考えさせる契機となりました。「フードバンク」のように、企業が売れ残った食品を福祉施設などに寄付する取り組みも広がっていますが、Aさんのケースのように、個人の善意に基づく行動が企業規定と衝突するケースも少なくありません。
専門家の見解:倫理とコンプライアンスのバランスが重要
食品ロス問題に詳しい専門家、山田一郎氏(仮名)は、「Aさんの行動は倫理的に賞賛されるべきものですが、企業としてはコンプライアンス遵守の観点から難しい判断を迫られたのでしょう。企業は、食品ロス削減とコンプライアンスのバランスを図り、従業員が安心して善意を行使できる仕組み作りが求められます」と指摘しています。
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Aさんの解雇は、食品ロス問題への意識の高まりとともに、大きな議論を呼ぶことになりそうです。今後の労働委員会の判断が注目されます。