米中貿易摩擦が激化の一途を辿る中、中国は関税以外の手段で米国への圧力を強めています。この記事では、中国によるボーイング機受領中断やレアアース輸出制限といった対抗措置、そしてベトナムとの首脳会談における中国の思惑について詳しく解説します。
ボーイング機受領中断:巨額損失の可能性
中国当局は、国内航空会社に対し、ボーイング製旅客機の受領を中断するよう指示を出しました。ブルームバーグ通信によると、この指示は米中貿易摩擦の一環として行われたもので、航空機関連装備や部品の購入も中断するよう命じられています。吉祥航空は既に1億2000万ドル相当のボーイング787-9の受領を保留しており、今後、中国南方航空、中国国際航空、廈門航空なども追随する可能性があります。これらの航空会社が受領を中断すれば、ボーイングは巨額の損失を被ることは避けられません。中国は今後20年間で世界の航空機需要の20%を占めると予測されており、ボーイングにとって中国市場の喪失は大きな痛手となるでしょう。
中国とベトナムの国家主席の握手
レアアース輸出制限:米国の軍事力に影響も
中国はレアアースの対米輸出制限にも踏み切りました。レアアースは戦闘機、軍艦、ミサイルなど、様々な兵器の製造に不可欠な素材です。例えば、F35ステルス戦闘機1機を作るには約400キログラムのレアアースが必要とされています。中国の輸出制限は米国の軍事力に深刻な影響を与える可能性があり、米戦略国際問題研究所(CSIS)のグレースリン・バスカラン理事は、中国の決定は米国の国家安全保障にとって非常に重要であると指摘しています。
ベトナムとの首脳会談:中国の思惑
中国の習近平国家主席はベトナムを訪問し、トー・ラム共産党書記長と会談を行いました。中国は米国の一方的な関税措置への共同対応を呼びかけましたが、ベトナムは中国との貿易不均衡の是正を要求し、米中紛争への言及は避けました。ベトナムは対中貿易赤字を対米貿易黒字で相殺するサンドイッチ貿易構造をとっており、米国の関税措置を警戒していると考えられます。また、南シナ海問題についても、ベトナムは中国による脅威の抑制に向けた合意の順守を促しました。
ベトナムの「竹外交」:強大国間でのバランス感覚
専門家の間では、ベトナムの外交姿勢は強大国間で実利的にバランスを維持する「竹外交」であると評価されています。忠北大学のパク・サンス教授は、ベトナムは習主席を歓待しつつも米国を意識した慎重な姿勢を崩さなかったと指摘し、今後の米中関係において、ベトナムの動向が重要な鍵を握るとの見方を示しています。
中国の対抗措置は米中貿易摩擦のさらなる激化を招く可能性があり、今後の展開が注目されます。世界経済への影響も懸念される中、両国間の緊張緩和が期待されています。