アメリカによる新たな関税発動に対し、石破茂首相は慎重な姿勢を崩していません。具体的な交渉カードには言及を避けつつも、「アメリカが非関税障壁と捉えている問題には迅速に対応する」と発言。90日間の猶予期間をどう活かすかが焦点となっています。今回は、専門家の見解も交えながら、日本が持つ2つの切り札「米国債」と「コメ関税」について深く掘り下げて解説します。
交渉の鍵を握る2つのカード:米国債とコメ
alt 日本の交渉カードを解説する神庭氏
ダイヤモンド・ライフ編集長、神庭亮介氏は、日本が持つ交渉カードとして「コメ関税」と「米国債」の2つを挙げました。
米関税、その実態と可能性
トランプ大統領は日本のコメ関税を「700%」と誇張していますが、実際は200%台。それでも高率であることは間違いありません。現在、国内のコメ不足と価格高騰は深刻な問題となっており、神庭氏は「日本の減反政策の歪みも影響している。トランプ大統領からの外圧を機に、コメ関税引き下げを奥の手として持つのは有効」と指摘。ただし、石破政権の地方創生方針や農家票への配慮から、参院選前にどこまで踏み込めるかは不透明です。
巨額の米国債、その潜在力
alt 石破首相
日本は1兆ドル(約140兆円)を超える米国債を保有しています。神庭氏は「米国債金利の急上昇に慌てたトランプ大統領が関税引き上げを90日間凍結した。アメリカの最大のアキレス腱は米国債であることが露呈した」と説明。中国のような敵対的な発言は逆効果ですが、「伝家の宝刀」として扱うべきだと主張します。
揺さぶり戦術、その効果
神庭氏は「米国債を世界で一番多く保有する日本は、最終兵器の抑止力を活用すべき。『売ります』と言う必要はなく、『絶対に売りません』と毎日言い続けるだけで謎の迫力が出る。『もしかして日本は…?』と疑念の種を植え付けられる」と揺さぶり戦術を提案。「売るつもりはありません」「一般論として売却はあり得ない」など、言い回しを変えることで市場の深読みを誘うことができると解説しています。第一生命経済研究所主席エコノミストの西浜徹氏も「市場は裏読みをする。様々な見せ方の一つのカードとしてあり得る」と同意見を示しています。
日本経済の未来は?
USTR(米通商代表部)は、日本のEV補助金制度、独自の急速充電規格、コメの輸入・流通システムなどを非関税障壁として問題視しています。立憲民主党の野田佳彦代表は「第2プラザ合意」のような為替問題が交渉材料になる可能性を指摘し、赤沢亮正経済再生担当大臣は「日米の財務当局間で緊密に議論していく」と述べました。米国債、コメ関税、そして為替問題。これらのカードをどう切り、日本経済を守っていくのか、石破政権の手腕が問われています。