今は誰も住んでいない関西地方にある一軒家は、1階から2階まですべての部屋が猫の糞尿まみれになっていた。つい最近までこの家には、数匹の猫だけが暮らしていたという――。
本連載では、さまざまな事情を抱え「ゴミ屋敷」となってしまった家に暮らす人たちの“孤独”と、片付けの先に見いだした“希望”に焦点をあてる。
YouTube「イーブイ片付けチャンネル」で多くの事例を配信するゴミ屋敷・不用品回収の専門業者「イーブイ」(大阪府)代表の二見文直氏に、ペットがいるゴミ屋敷について、そのリアルを聞いた。
動画:思い出の実家が「たった5年」で崩壊-その背後にある理由
■猫だけが住んでいる「糞尿ゴミ屋敷」
築50年は超えているだろうモルタル壁の一軒家。1階に4部屋、2階に2部屋とかなり広い間取りだ。玄関には無数のチラシ類が溜まっていて、目の前にある2階へ上る階段には猫のエサが盛られた皿が置かれたままである。
この家には約2年の間、数匹の猫だけが生活していた。ふすまや壁は猫の爪でボロボロになっている。
エサだけはあげに来ていたようだが、掃除はまったくされていない。ドス黒く固まったペットシーツが放置され、1階から2階まですべての部屋が猫の糞尿まみれである。
【写真】「家中が糞尿まみれに…」猫たちが暮らしていた《あまりに過酷な環境》【生まれ変わった部屋を見る】(56枚)
ゴミやモノが天上まで積み上がっている……というようなゴミ屋敷ではないが、臭いはかなりキツく、大量の糞尿が畳と床に侵食し、完全に荒廃しきっていた。
家主は60代の女性。イーブイに片付けの依頼をしてきたのは、その家主の妹だった。妹が話す。
「私が(最後に)来たのが5年以上前で、そのときはきれいでした」
シングルマザーだった家主は、もともと3人の子どもと猫たちと一緒にこの家で暮らしていた。子どもたちは大人になるにつれ、1人ずつ独立し家を出て行き、最後に猫と家主だけが残った。
■惨状を子どもたちには内緒にしていた
しかし、家主には猫たちの面倒を見切れない事情があった。重度の喘息持ちだったのだ。
妹いわく、家主は「子どもに迷惑をかけないために、自分が我慢すればいい」という思いが非常に強かった人だという。