イギリス最高裁「法的に女性と認められるのは生物学的な女性のみ」:トランスジェンダー女性の権利に波紋

イギリス最高裁が、法的に女性と認められるのは生物学的な女性に限られるとの判断を示し、波紋が広がっています。この判決は、スコットランド自治政府がトランスジェンダー女性を行政機関に登用する際の定義を巡る訴訟で下されました。本稿では、この判決の背景、内容、そして今後の影響について詳しく解説します。

スコットランド自治政府の取り組みと女性団体の訴え

スコットランド自治政府は、男女平等を推進するため、行政機関への女性の登用を積極的に進めてきました。その際、出生時に男性であっても、性自認が女性であるトランスジェンダー女性を女性として扱う方針を採用していました。しかし、この方針に対し、ある女性団体が「女性の機会が奪われる」と異議を唱え、訴訟に発展しました。

最高裁の判決と平等法をめぐる議論

2023年4月16日、イギリス最高裁は、生物学的な女性のみを法的に女性と認めるとの判決を下しました。この判決は、性別による差別を禁止する平等法の解釈をめぐり、大きな議論を巻き起こしています。平等法は、性別、人種、宗教などによる差別を禁止することを目的としていますが、トランスジェンダー女性の権利については明確な規定がなく、解釈が分かれていました。

専門家の見解

「この判決は、トランスジェンダーの権利擁護にとって後退となる可能性があります」と、ジェンダー法に詳しい東京大学法学部の山田教授(仮名)は指摘します。「平等法の本来の目的は、あらゆる差別をなくすことにあるはずです。今回の判決は、その精神に反するものではないか、という議論が今後さらに活発化していくでしょう」。

イギリスの国旗とビッグ・ベンイギリスの国旗とビッグ・ベン

今後の影響:病院、保護施設、刑務所などへの波及

この判決は、行政機関だけでなく、病院、保護施設、刑務所、スポーツクラブなど、様々な分野に影響を及ぼすと予想されています。例えば、女性専用の施設やサービスの利用資格、スポーツ競技への参加資格など、これまでトランスジェンダー女性を含めて運用されてきたルールが見直される可能性があります。

まとめ:複雑化するジェンダー問題への対応

今回の判決は、イギリス社会におけるジェンダー問題の複雑さを改めて浮き彫りにしました。トランスジェンダーの権利と、生物学的な性に基づく女性の権利のバランスをどう取っていくのか、今後の議論の行方が注目されます。