交通系ICカードは、日本国内の移動をスムーズにする便利なツールとして広く普及しています。しかし、広島電鉄で導入された新システム「MOBIRY DAYS」をめぐり、思わぬ混乱が生じています。本記事では、その背景や影響、そして今後の展望について詳しく解説します。
地方の交通ICカード:利便性と課題
近年、外国人観光客の増加も相まって、交通系ICカードの利便性はますます高まっています。地方都市でも多くの路線で利用可能となり、キャッシュレス化を促進する役割も担っています。しかし、中小の鉄道事業者にとっては、全国相互利用可能なシステムの維持・更新には大きなコスト負担が伴います。これが、広島電鉄におけるシステム変更の背景にあります。
広島電鉄の路面電車
広島電鉄「PASPY」から「MOBIRY DAYS」へ:混乱の始まり
これまで広島県内の公共交通機関では、「PASPY」というICカードシステムが利用されていました。このシステムはICOCAなどの全国相互利用可能な交通系ICカードにも対応しており、観光客にも大変便利でした。しかし、システム更新に伴い、2025年春に「MOBIRY DAYS」へと全面的に移行。この変更が、利用者にとって大きな混乱を招くこととなりました。
「MOBIRY DAYS」への移行に伴い、交通系ICカード利用者は乗務員がいる扉で簡易型ICOCA端末にタッチする必要が生じました。「MOBIRY DAYS」専用の読み取り装置とは別にICOCAやSuica用の端末が設置され、乗務員がいない扉では「MOBIRY DAYS」のみ利用可能という、非常に分かりにくい状況が発生。導入直後には多くの利用者が戸惑い、混乱が生じたといいます。 旅行ガイドブックで交通系ICカードの利便性を紹介されている外国人観光客にとっては、なおさら混乱を招く事態と言えるでしょう。
コスト削減と利便性のジレンマ:地方交通の未来
広島電鉄が「PASPY」から「MOBIRY DAYS」へ移行した最大の理由は、システム更新にかかるコスト削減です。ICOCAやSuicaなどの全国相互利用可能なシステムは、中小規模の事業者にとっては大きな負担となるため、より低コストのシステムを採用したのです。
「MOBIRY DAYS」はスマートフォンアプリでQRコードを読み取る方式が中心となっており、一見すると便利に見えます。しかし、物理カードを持っていてもスマートフォン操作が必要になったり、銀行からのチャージが特定の地元銀行に限られるなど、不便な点も多いのが現状です。
交通系ICカードの利用をめぐって混乱に
他地域への波及:全国的な課題へ
広島電鉄は、「PASPY」を使用していた他の事業者も「MOBIRY DAYS」に参加すると想定していましたが、実際には多くの事業者がICOCAに移行しました。また、熊本県でも同様の理由から、地元専用のICカードやクレジットカードのタッチ決済システムを採用する動きが出ています。
地方の交通事業者がシステム更新のコストと利便性のバランスをどのように取っていくのかは、全国的な課題と言えるでしょう。交通事業者、利用者、そして行政が協力し、より良い解決策を探っていく必要があります。 例えば、国による補助金制度の拡充や、共通システムの開発支援などが考えられます。 観光立国を目指す日本にとって、スムーズな交通網の整備は不可欠です。 今後の動向に注目が集まります。