清瀬市の学校統廃合問題:コンサル主導で何が起きたのか?

近年、地方自治体で進む学校統廃合。効率化の名のもとに進められる一方で、その裏には様々な問題が潜んでいます。東京都清瀬市では、民間の経営コンサルタント会社が主導した統廃合計画が大きな波紋を呼びました。今回は、清瀬市の事例を通して、学校統廃合の現状と課題に迫ります。

コンサルタント会社による計画策定の実態

2019年、清瀬市は公共施設再編計画を策定し、それに基づき学校再編計画も作成されました。驚くべきことに、これらの計画を主導していたのは、民間の経営コンサルタント会社でした。2020年に開催された市民説明会では、コンサルタント会社の社員が説明役を務めたため、市民から「あなたは誰だ?」という声が上がり、大きな反発を招きました。

清瀬市役所清瀬市役所

市民団体「清瀬市の『公共施設再編計画』を考える会」(以下、「考える会」)の事務局で活動するA氏によると、説明会でのコンサルタント会社の対応は市民の不信感を増幅させる一因となったとのこと。その後、コンサルタント会社の社員が前面に出ることはなくなりましたが、計画への関与は継続しているとの見方もあります。

現実を無視した計画内容

コンサルタント会社が作成した学校再編計画は、多くの問題点を抱えていました。例えば、老朽化した清瀬小学校の校舎を建て替え、第八小学校と近隣の中学校を統合して小中一貫校とする計画は、児童数が増加している第八小学校の現状を無視したものでした。

統合によって通学距離が長くなるだけでなく、1000人を超えるマンモス校が誕生する可能性も懸念されました。教育の質の低下や学校運営の困難化など、子どもたちへの悪影響が危惧されるこの計画に対し、市民からは反対の声が相次ぎました。

「考える会」による反対署名運動など、市民の強い反対を受け、現在、コンサルタント会社による計画は凍結されています。しかし、計画凍結にもかかわらず、コンサルタント会社は市から一定の報酬を受け取っていると考えられています。

全国的な問題:コンサルタント会社への丸投げ

清瀬市の事例は氷山の一角に過ぎません。東京自治問題研究所理事長で和光大学名誉教授の山本由美氏は、多くの自治体が学校統廃合計画をコンサルタント会社に丸投げしていると指摘しています。山本氏は、『学校統廃合と公共施設の複合化・民営化』(自治体研究所、尾林芳匡との共著)の著者でもあり、統廃合問題に精通しています。

地方自治体の財政難や少子化を背景に、学校統廃合は今後も進んでいくと予想されます。しかし、効率化だけを重視し、子どもたちの教育環境や地域の実情を無視した計画は、大きな問題を引き起こす可能性があります。

専門家の中には、地域住民の声を丁寧に聞き取り、きめ細やかなニーズに対応した計画策定が必要だと訴える声も上がっています。例えば、教育コンサルタントのB氏(仮名)は、「地域住民との対話を重視し、学校統廃合のメリット・デメリットを丁寧に説明することが重要」と述べています。

学校統廃合は、子どもたちの未来を左右する重要な問題です。行政、地域住民、そして専門家が一体となって、より良い教育環境の実現に向けて取り組む必要があると言えるでしょう。