文部科学省、学校給食「食品添加物」記述見直しへ:長年の誤解払拭なるか

長年にわたり食品科学者から「食品添加物への誤解を招く」と指摘されてきた文部科学省の学校給食衛生管理基準が、ようやく見直される方向にある。内閣府食品安全委員会や消費者庁の粘り強い働きかけが背景にあり、食の安全に関する正確な情報提供への期待が高まっている。未だに食品添加物に対し不安を感じる声が多い中、文科省がどのような見直しを行うか、その動向が注目される。

学校給食衛生管理基準における「有害添加物」の誤解

これまで問題視されてきたのは、文部科学省が所管する学校給食法に基づく「学校給食衛生管理基準」(2009年4月施行)の記述だ。特に「食品の選定」に関する項目で、「有害若しくは不必要な着色料、保存料、漂白剤、発色剤その他の食品添加物が添加された食品、又は内容表示、消費期限及び賞味期限並びに製造業者、販売業者等の名称及び所在地、使用原材料及び保存方法が明らかでない食品については使用しないこと」と明記されている点が議論の的となっていた。

文部科学省の庁舎と、食品添加物の安全基準見直しに対する期待文部科学省の庁舎と、食品添加物の安全基準見直しに対する期待

この文言は「学校給食では、有害または不必要な食品添加物を使用しない」と解釈されがちだが、専門家からは「文部科学省が『食品添加物は有害だ』と公言しているに等しく、学校給食の関係者に『食品添加物は危険なもの』という誤認を与える恐れがある」との指摘が相次いでいた。そもそも、国内で流通し、学校給食を含む一般食品に使用される食品添加物は、すべて国の安全性評価と認可を経ており、有害なものが使用されることは食品衛生法に違反する。そのため、この記述自体が不要であるとの声も聞かれた。

長年にわたる懸念と関係機関の働きかけ

この問題は、2014年には食品安全委員会の「リスクコミュニケーションのあり方に関する勉強会」で議題となり、「文科省が『有害な食品添加物』という前提に立つのはおかしい」との意見が識者から提出された。さらに、消費者庁が2019年から2020年にかけて設置した「食品添加物表示制度に関する検討会」においても、この「有害な食品添加物」という表現が消費者や学校給食関係者にリスクに関する誤解を生むと指摘された。この検討会を機に、2020年7月には全国消費者団体連絡会の事務局長ら4名が直接文科省の担当者に面会し、基準の見直しを強く求めた。

しかし、当時の文科省は「『国に認められない添加物が使われないように』という意味であり、この文言だけを変更することは難しい」と回答し、見直しには消極的な姿勢を示していた経緯がある(2020年7月3日付FOOCOMメールマガジン参照)。長年の懸案事項であったこの記述が今回見直される運びとなったことは、食の安全に関する情報伝達の正確性を高める上で大きな進展と言えるだろう。

今後の展望と期待

今回の文部科学省による学校給食衛生管理基準の見直しは、食品添加物に対する不必要な不安や誤解を解消し、科学的根拠に基づいた食の安全に関する理解を促進する上で極めて重要である。食品安全委員会や消費者庁など関係機関の尽力により、ようやく実現に近づいている。今後、文科省がどのような形で具体的な見直し内容を提示し、それがどのように学校現場や保護者に伝えられるか、そのプロセスが注視される。この見直しが、日本の食育と安全保障における信頼性向上の一助となることを期待したい。


参考文献: