動物園は、愛らしい動物たちとのふれあいを提供するだけでなく、貴重な教育の場でもあります。しかし、近年の物価高騰は、多くの餌を必要とする動物園経営に大きな影を落としています。今回は、東武動物公園がどのようにこの難局を乗り越えているのか、その舞台裏をご紹介します。
吉野家からの贈り物:年間50トンのキャベツ
物価高騰の中でも特に深刻だったのがキャベツの値上がり。家計を圧迫するほどの高騰は、動物園にとっても大きな痛手でした。そんな中、東武動物公園には心強い味方がいました。なんと、牛丼チェーンの吉野家から、年間約50トンものキャベツと白菜が提供されているのです。
東武動物公園の動物たち
この取り組みは、十数年前から始まりました。当初は無料で提供されていたキャベツですが、動物園側からの申し出により、現在はガソリン代のみを負担する形となっています。
食育とSDGs:三方よしのビジネスモデル
年間50トンものキャベツは、想像をはるかに超える量です。東武動物公園の動物たちの食卓を支えるだけでなく、食品ロス削減にも大きく貢献しています。吉野家にとっては産業廃棄物処理費用の削減、東武動物公園にとっては餌代の節約、そして社会にとってはSDGsへの貢献。まさに「三方よし」の素晴らしいビジネスモデルと言えるでしょう。
動物園事業部顧問の下康浩氏によると、提供されるキャベツは想像以上に質の高いものだったそうです。「一番外側の葉くらいかと思っていたのですが、かなり内側の葉までいただいて驚きました。吉野家さんのサラダに使われているキャベツは、本当に美味しい部分だけなのだと実感しました」と語っています。
循環型社会の実現に向けて
この取り組みは、単なるコスト削減策にとどまらず、持続可能な社会の実現に向けた重要な一歩と言えるでしょう。食の循環を促し、環境負荷を低減するだけでなく、企業と動物園の新たな連携の形を示しています。
動物園が生き生きと活動を続けるためには、社会全体からのサポートが不可欠です。東武動物公園と吉野家の取り組みは、その好例と言えるでしょう。
未来への希望:動物園と企業の協働
物価高騰という逆境の中、知恵と工夫で乗り越えようとする動物園の努力、そしてそれを支える企業の協力。この力強いタッグは、私たちに未来への希望を与えてくれます。