福岡市の小学校で4月18日に提供された、おかずの「唐揚げが1個だけ」という給食が大きな波紋を呼びました。麦ご飯、鶏のから揚げ、春キャベツのみそ汁、牛乳という献立でしたが、実際に公開された写真があまりにも質素に見えたことから、インターネット上では心配や批判の声が多数寄せられました。福岡市長も自身のFacebookで「正直に言って私も大変ショックでしたし、福岡の子どもたちに申し訳ない気持ちにもなりました」とコメントしています。そして、学校給食のある小学校に通う子どもを持つ親であり、さらに食を専門とする立場である筆者も、この件には非常に残念な気持ちを抱きました。
しかし、ここで福岡市の給食そのものを批判するつもりはありません。この騒動をきっかけに、日本の公立小中学校の学校給食について「もっと知られるべき事実」があることに気がついたのです。光が当たりにくい場所にも、素晴らしい取り組みはたくさんあります。良い点も交えながら、日本の給食の実力について話を始めましょう。
福岡市の学校給食に関する情報源 福岡市学校給食公社のウェブサイト
保護者も参加できる!ある自治体の給食試食会とその価値
今回の福岡の件を通じて改めて実感したのは、自分の子どもが日々食べている給食の質の高さです。東京都の公立小学校に通う我が子は、いつも「学校の給食が大好き」と言っています。入学式の際、校長先生が「うちの小学校は給食が自慢です」と話されていたことも印象に残っています。
どのような給食が提供されているのかを保護者が知る機会として、年に一度の試食会(希望制)が開催されています。ここでは栄養士の先生が、献立の内容や使用されている食材について丁寧に説明してくれます。試食会で特に感動したのは、だしへのこだわりでした。削り節や出し昆布、煮干しなどから丁寧にとった本格的なだしを使用していること、さらに洋風スープも既製品ではなく鶏ガラや豚骨から出汁をとっているという説明には、その手間ひまに頭が下がりました。
本物の味と手作りの温かさ こだわりの給食作り
給食の品質をさらに高めているのが、手作りに徹している点です。ハンバーグやコロッケ、デザートのゼリーやケーキはもちろんのこと、多くの学校で既製のルーが使われがちなカレーも、バターや米油、小麦粉からルウを手作りしているとのこと。作り手の矜持と子どもたちへの愛情がひしひしと伝わってきます。
加えて、月に一度オリジナルの手作りパンを焼くなど、「楽しめる食事」というコンセプトを忠実に実現していると感じます。これまでに何度か試食する機会がありましたが、毎回心から美味しいと思えるレベルでした。さらに、子どもが気に入ったメニューのレシピを教えてくれるといった、細やかな配慮も多くの学校で行われています。これは単に食事を提供するだけでなく、食への興味や感謝の気持ちを育むことにも繋がっているのではないでしょうか。
まとめ:給食は単なる食事ではない
福岡市の給食問題は、日本の学校給食システムに対する関心を高めるきっかけとなりました。一件の問題だけでなく、その裏側にある全国各地の栄養士さんや調理員さんたちの知られざる努力と、子どもたちの成長を支える高品質な給食の実態にも目を向けるべきです。だしをゼロから取ったり、ルウを手作りしたり、保護者に試食の機会を提供したりといった取り組みは、単に栄養バランスの取れた食事を提供する以上の価値を持っています。それは、子どもたちに「本物の味」を教え、食の楽しさを伝え、多くの人々の手によって支えられている社会の仕組みを間接的に学ぶ機会にもなっているからです。学校給食は、日本の教育システムにとって非常に重要な役割を果たしていると言えるでしょう。
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