ローマ・カトリック教会の頂点に立ち、世界に大きな影響を与えた教皇フランシスコが88歳でこの世を去りました。世界13億人とも言われるカトリック信者の精神的支柱であった彼の生涯と、教皇という存在について改めて振り返ってみましょう。
教皇フランシスコ、その人となり
サンピエトロ大聖堂で祈りを捧げる教皇フランシスコ
2013年、前教皇ベネディクト16世の生前退位という異例の事態を受け、フランシスコは教皇の座に就きました。アルゼンチン・ブエノスアイレス出身の彼は、約1300年ぶりとなる非ヨーロッパ出身の教皇として、世界中から注目を集めました。
イタリア系移民の中流家庭で育ち、ブエノスアイレスでは地下鉄を利用するなど、庶民的な生活を送っていたフランシスコ。大のサッカーファンとしても知られ、その飾らない人柄は多くの人々の心を掴みました。カトリック教会の伝統を重んじながらも、貧困問題や環境問題への積極的な取り組み、そしてLGBTQ+の人々への寛容な姿勢は、現代社会における教会の役割を改めて問いかけるものでした。宗教指導者としてだけでなく、一人の人間としての温かさも持ち合わせた人物でした。
ローマ教皇の役割と責任
ローマ教皇フランシスコ、柔和な表情で群衆に語りかける
ローマ教皇は、カトリック教会の最高指導者として、広範な権限を有しています。枢機卿や司教の任命権はもちろんのこと、バチカン市国の元首として行政の最高責任者も務めます。
教皇の職務は多岐に渡ります。ミサや洗礼などの宗教儀式を執り行うだけでなく、世界中から訪れる巡礼者との謁見、海外への布教活動など、精力的に活動しています。毎週日曜日の正午には、バチカンのサンピエトロ大聖堂前に集まった信者に向けて「お告げの祈り」を唱える姿は、世界中に配信され、多くの人々に希望を与えています。また、教皇自発教令の発布や、信仰の指針となる文書の作成など、カトリック教会の運営にも深く関わっています。教皇フランシスコは、これらの伝統的な役割に加え、現代社会の課題にも積極的に取り組み、世界平和の実現に尽力しました。
教皇選出の儀式「コンクラーベ」
教皇が逝去、もしくは生前退位した場合、新たな教皇を選出するための儀式「コンクラーベ」が行われます。ミケランジェロの「最後の審判」で有名なシスティナ礼拝堂が会場となり、外部との接触を完全に遮断した状態で選挙が行われます。「コンクラーベ」という言葉はラテン語で「鍵と共に」を意味し、その厳粛さを物語っています。
コンクラーベ:システィナ礼拝堂の煙突から上がる白い煙
80歳未満の枢機卿による無記名投票で、出席者の3分の2以上の票を獲得した者が新教皇に選出されます。投票結果は、礼拝堂の煙突から出る煙の色で示され、白煙なら選出、黒煙なら未選出となります。世界中が固唾を飲んで見守る中、煙の色が白に変わる瞬間は、まさに歴史的な瞬間と言えるでしょう。
理論上、男性カトリック教徒であれば誰でも教皇になる資格がありますが、14世紀以降は枢機卿から選ばれるのが慣例となっています。新教皇がどのような人物になるのか、そしてカトリック教会の未来がどうなるのか、世界中が注目しています。