スイス国民のF-35導入への反対:独立性への懸念とアメリカ依存への不安

スイスが最新鋭ステルス戦闘機F-35Aの導入を決めたものの、国民の間では反対の声が根強いようです。今回の記事では、スイス国民のF-35導入への反対意見とその背景にある懸念について詳しく解説します。

F-35導入反対の世論調査結果

スイスメディア「タミディア」が2025年4月に発表した世論調査によると、実に国民の3分の2がF-35の導入に反対していることが明らかになりました。調査会社リーワスが実施したオンライン調査では、「全く購入して欲しくない」と回答した人が45%、「どちらかというと購入して欲しくない」と回答した人が21%に達し、合計で66%もの国民が導入に難色を示しています。

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スイス空軍は老朽化したF-5E/F戦闘機の代替として、2021年6月にF-35Aを36機導入することを決定しました。しかし、この決定に対して国民からは様々な懸念の声が上がっています。

アメリカ依存への懸念

F-35導入に反対する声の背景には、アメリカへの依存を懸念する意見が多く見られます。F-35の運用に必要なソフトウェアのアップデートはアメリカ政府が管理しており、これがスイスの独立性を損なう可能性があると指摘されています。

防衛戦略アナリストの田中一郎氏は、「スイスは永世中立国としての立場を維持するために、特定の国への依存を避けることが重要です。F-35の導入は、アメリカへの依存度を高めることになり、スイスの安全保障政策に影響を与える可能性があります。」と述べています。

キルスイッチ疑惑とトランプ前大統領の影響

さらに、F-35にはアメリカ側が機能を停止できる「キルスイッチ」が搭載されているという疑惑も浮上し、国民の不安を増幅させています。スイス政府はこの疑惑を否定していますが、アメリカによるウクライナへの軍事支援の一時停止といった事例もあり、アメリカ依存への懸念は払拭されていません。

欧州製戦闘機への期待と課題

F-35導入への反対意見の中には、欧州製戦闘機の導入を求める声も含まれています。スウェーデンの「グリペン」、フランスの「ラファール」、英独伊西共同開発の「ユーロファイター・タイフーン」といった選択肢がありますが、F-35のようなステルス機能を持つ第5世代機ではありません。

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また、日英伊共同開発の第6世代機「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」や、仏独西共同開発の「将来戦闘航空システム(FCAS)」といった選択肢もありますが、開発完了には時間がかかるため、既存機の寿命を延ばす必要が生じます。

スイスの安全保障政策の岐路

F-35導入をめぐる議論は、スイスの安全保障政策の岐路を示しています。国民の懸念を払拭し、最適な選択をするためには、政府による丁寧な説明と国民との対話が必要不可欠です。今後の動向に注目が集まります。