奈良公園のシカと観光客:盗撮問題の闇、SNSバズ狙いの危険性

近年、SNSで「奈良のシカ」と戯れる観光客の動画が人気を集めています。特にTikTokでは、女性観光客の動画をまとめたアカウントが話題となり、中には露出度の高い服装の女性を映した動画も含まれていました。しかし、これらの動画は盗撮の可能性があり、大きな問題となっています。本記事では、この問題の背景、影響、そして対策について詳しく解説します。

盗撮動画の横行とSNSビジネス

ITジャーナリストの三上洋氏によると、奈良公園でシカと触れ合う女性観光客の動画は、一種の「流行りコンテンツ」としてSNS上で拡散されています。複数のアカウントがこうした動画をまとめ、中には月額制のサブスクリプションサービスを提供し、ビジネス化しているケースもあるとのことです。問題点は、これらの動画が被写体の同意なしに撮影・アップロードされている可能性が高いことです。「露出系インフルエンサー」と呼ばれる人々が意図的に露出度の高い服装で動画を撮影・公開するケースもありますが、奈良公園の動画は、無防備な観光客が盗撮の被害に遭っている可能性が懸念されます。

奈良公園のシカ奈良公園のシカ

三上氏は、問題のTikTokアカウントの投稿者が実際に奈良公園を訪れている可能性は低いと指摘します。奈良公園は国内外から多くの観光客が訪れる人気のスポットであり、常に多くの人で賑わっています。その中で無防備な状態の女性を盗撮することは容易であり、そうした動画が本人の知らないうちにインターネット上にアップロードされるリスクも高まります。三上氏は、こうした動画をダウンロードで集め、人気アカウントを作り上げる手法が用いられている可能性が高いと分析しています。

インバウンド増加に伴う新たな課題

新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類感染症に移行後、訪日外国人観光客数は急増しています。日本政府観光局(JNTO)のデータによると、2024年の訪日外国人は約3687万人で過去最高を記録。訪日ラボが発表した「外国人に人気の観光地ランキング」では、奈良公園は第6位にランクインしています。年間約1300万人が訪れる奈良公園ですが、観光客の増加に伴い、新たな問題も発生しています。2024年7月には、シカを蹴ったり叩いたりする動画がSNSで拡散され、問題となりました。これを受け、奈良県は県立都市公園条例の施行規則を改正し、シカへの加害行為を禁止行為として明文化しました。

奈良公園の対策と課題

では、今回問題となっている盗撮行為に対して、奈良公園側はどのような対策を講じているのでしょうか。奈良公園管理係の担当者は、NEWSポストセブンの取材に対し、奈良県立都市公園条例施行規則第12条に基づき、「公園の利用者が、他の利用者に危害又は迷惑を及ぼす行為」を禁止していると回答しました。無断で利用者を撮影することは不適切であり、迷惑行為に該当すると認識しているとのこと。風景や知人の撮影をしている場合もあり、一見して盗撮と判別することは難しいものの、管理パトロールの中で盗撮行為を発見した場合は、状況に応じて対応しているとしています。

まとめ:安全で楽しい観光地を目指して

SNSでのバズり目的で、シカと観光客が狙われるという現状は深刻です。誰もが安心して楽しく観光できる環境を守るためには、盗撮問題の根絶が必要です。関係機関の連携、そして観光客一人ひとりの意識向上によって、この問題解決への道筋を探る必要があります。