(CNN) 北極圏の凍った原野が、最近にわかに世界の注目を集めている。
トランプ米大統領はグリーンランドの獲得に意欲を示し、中国とロシアはシベリア沖を通る北極海航路の開発に関心を強めてきた。
だが新たに注目されるのは、地政学的な側面ばかりではない。米アラスカからフィンランド北端のラップランドまで、北極圏では記録的な数の観光客が報告されている。
一般の旅行者にとって北極はまだ遠い場所かもしれないが、そのすぐ近くまで飛んでいる航空会社もある。
商業定期便が運航する空港の中で世界最北端にあるのが、ノルウェーのスバールバル空港だ。スカンジナビア航空(SAS)とノルウェー航空が通年で、同諸島の中心都市ロングイェールビーンとノルウェー本土の間の800キロあまりを往復している。チャーター便や自家用ジェットの発着もある。
ひ弱な土地への生命線
北極圏は世界の中でも特に、環境の変化に対して脆弱(ぜいじゃく)な地域のひとつだ。スバールバル空港のスタッフはすでに、気候変動の影響を感じ始めている。
同空港にある全長2300メートルの滑走路は1970年代前半、永久凍土層の上に建設された。当時、この層が溶け始めることなどだれも予想しなかったが、まさに今、それが現実となっている。
永久凍土は、2年以上連続して凍ったままの地面と定義される。スバールバル諸島では地面が温まって溶ける現象が目立ち、建物やインフラの不安定化や沈下、土砂崩れや雪崩のリスク増大が問題になっている。
空港の責任者はCNNとの電話インタビューで「夏の間は毎日、滑走路を念入りにチェックする必要がある。土壌がいつ沈下してもおかしくないからだ。問題は今後さらに悪化する一方だろう」と話した。
スバールバルに暮らす約2500人の住民にとって、滑走路の重要性はどんなに強調してもしきれない。閉鎖されればほとんどの必需品は船で運ぶしかなく、そうなると片道で最大2日かかる。
「空港には常に予備のスタッフと資材を置いている。何かが壊れたら、外の力を借りずに自分たちで修理できる状態にしておかなければ」と、同責任者は話す。地元の発電所で故障が起きた時は、本土から軍のC-17輸送機で非常用発電機が運び込まれたという。
スバールバルでは長年、発電がデリケートな問題とされてきた。地球温暖化を防ぎ、地元の自然を守ることが住民の利益となる一方で、現地の経済はつい最近まで、石炭にほぼ完全に依存していたからだ。