憲法改正に関する国民投票法改正案の今国会成立への展望が開けない。与党は21日を衆院憲法審査会で採決する「タイムリミット」と位置づけるが、立憲民主党など野党に応じる気配はない。自民国対筋からは「強行採決」を示唆する声も上がり始めているが、仮に衆院を通過しても参院側の準備不足は否めず、成立するかは見通せない。
「今国会で結論を出すことが大事だ」
自民党の森山裕国対委員長は19日の記者会見で、改憲手続きを定めた国民投票法改正案の成立に重ねて意欲を示した。
安倍晋三首相の自民党総裁任期が2年を切る中、与党は国民投票法改正案の今国会成立を必達目標に掲げる。参院での審議時間を考慮すると、会期延長がなければ衆院憲法審の採決期限は21日とする見方が強い。
ただ、安倍政権下での改憲に慎重な野党は、国民投票運動時のCM規制の先行議論を要求するなど「遅滞戦術」に出ている。
衆院憲法審の与党筆頭幹事を務める自民党の新藤義孝氏は、改正案の採決を繰り返し呼びかけるが、野党は「中途半端な中での採決はなじまない」(立民・安住淳国対委員長)と拒否する構えを崩さない。
参院側も改正案を迎え入れる準備は万端とはいえない。参院憲法審の幹事同士による協議が開かれた形跡はなく、自民参院幹部は「衆院のようすを見てからだ。むりやり今国会でやらなくてもいい」と改正案の扱いに消極的だ。参院では共産党が憲法審の開催自体に反対している事情もあり、「むしろ衆院よりも扱いが難しい」(自民中堅)との声も上がる。
国会運営を担う自民国対はいらだちを募らせている。ある幹部は19日、「改正案はもう4国会も継続(審議)になっている」と述べ、与党や改正案に賛成する一部野党のみで採決に踏み切る可能性を示唆した。18日には二階俊博幹事長が強行採決の可能性を否定したが、「何年待っても立憲や共産は反対だ」(自民国対筋)と強行採決の容認論は強まりつつある。
ただ、与野党間の合意なしに採決に踏み切れば主要野党の反発は必至で、本丸の改憲議論はこれまで以上に停滞する公算が大きい。今国会の最大の焦点である日米貿易協定の承認案の成立もおぼつかなくなる。会期が残り3週間と迫る中、与党は難しい国会運営を強いられている。
(大橋拓史、今仲信博)