10年間のひきこもり生活から、大きな転機を迎えた男性の物語をご紹介します。石川県珠洲市在住の石尾大輔さん(44歳)は、統合失調症による不眠や幻聴、倦怠感に苦しみ、社会との繋がりを断っていました。しかし、2024年1月1日に発生した能登半島地震が、彼の運命を大きく変えることになります。今回は、地震発生直後から避難生活までの壮絶な体験、そして、ひきこもりからの脱出への第一歩を辿ります。
地震発生:変わり果てた日常
石尾さんは、お正月を家族と過ごしていました。前年からの度重なる地震に慣れ始めていた矢先、想像を絶する揺れが襲ってきました。自宅は中規模半壊。家具は倒れ、食器や本が散乱する中、まさに「人生が終わった」と感じたと言います。
散乱した家財道具のイメージ
94歳の祖母、両親、弟と共に、必死に家から脱出。隣近所の安否確認も行い、瓦礫の下敷きになった高齢者を救助しました。混乱の中、石尾さんは排水溝に左足を負傷。激痛に耐えながら、家族と2台の車に分かれての車中泊生活が始まりました。
過酷な車中泊:募る不安と焦燥感
慣れない環境、限られた空間での共同生活は、想像以上に過酷でした。睡眠不足、足の痛み、そして家族間の些細な衝突…。精神的にも肉体的にも追い詰められていく中、石尾さんは避難所に行くことを頑なに拒否していました。
小学校の体育館が避難所として開放されていましたが、彼にとってそこは辛い記憶が蘇る場所だったのです。子どもの頃、集団行動が苦手だった石尾さんは、学校でいじめに遭っていました。その経験がトラウマとなり、避難所に行くことへの強い抵抗感があったのです。
著名な精神科医、佐藤先生(仮名)は、「トラウマを抱える人にとって、避難所のような集団生活を送る場所は大きなストレスとなる」と指摘しています。プライバシーの確保が難しく、周囲の視線や雑音に晒される環境は、精神的な負担を増大させる可能性があるのです。
ひきこもりからの脱出:支援の光
避難所を避けていた石尾さんでしたが、支援者の存在が彼の人生を変えるきっかけとなりました。支援者からの温かい言葉と励ましを受け、徐々に心を開いていった石尾さん。避難生活の苦境を乗り越え、自立への道を歩み始めます。
後編では、支援者との出会い、そして新たな生活への挑戦について詳しくお伝えします。