ドイツでの出産体験記:緊急帝王切開と産後トラウマからの克服

ベルリン在住の特派員である筆者が、異国での妊娠・出産、そして産後トラウマを乗り越えた経験を綴ります。妊娠高血圧症による緊急帝王切開、慣れない環境での育児…様々な困難に直面しながらも、家族や専門家のサポートを得て、新たな人生のスタートを切ることができました。この記事では、筆者のリアルな体験を通して、海外出産の現実と産後ケアの重要性についてお伝えします。

思い描いていたものとは違う出産

ドイツでの出産を夢見ていた筆者。しかし、現実は甘くありませんでした。妊娠後期に妊娠高血圧症と診断され、緊急帝王切開での出産となりました。陣痛促進剤を使用するも効果が出ず、4日間もの陣痛に耐え、最終的に帝王切開に至ったのです。産院のスタッフは親切で、無事に出産できたことに安堵したものの、心にはモヤモヤとしたものが残っていました。

altalt母子手帳の出産経過ページ。出産時の記憶が蘇り、感情が揺さぶられることもありました。

涙が止まらない…産後トラウマとの出会い

産後数日経ってから、異変に気付きました。娘の誕生を振り返ると、涙が止まらなくなってしまったのです。母子手帳を見るたびに、出産時の記憶がフラッシュバックし、感情がコントロールできなくなりました。「お産のトラウマ」という言葉を知ったのは、それから数週間後のことでした。

ドイツ助産師協会理事のアンドレア・ケプケさんによると、お産のトラウマは出産時に「自分の意思で決められない」という経験をした際に起きやすいとのこと。医療介入への納得感の欠如、出産時の孤独感、心身の暴力などが引き金となるそうです。私の場合は、緊急帝王切開という予期せぬ展開、そして長期にわたる陣痛がトラウマの原因となったのかもしれません。

専門家への相談と家族の支え

1~3割の母親がお産のトラウマに悩むという現状を知り、私も専門家への相談を決意しました。幸い、ドイツには産後、助産師が毎日自宅訪問する制度があります。担当の助産師さんに相談し、夫にも話を聞いてもらうことで、徐々に心は落ち着きを取り戻していきました。

altalt出産直後の写真。この時はまだ、産後トラウマに悩まされることになるとは想像もしていませんでした。

出産は素晴らしい経験だけではないけれど…

出産は必ずしも美しい思い出ばかりではありません。困難や苦しみを伴うこともあります。しかし、かけがえのない経験であることは間違いありません。そして、何よりも大切なのは、母子の健康と幸せです。産後、心身に不調を感じたら、一人で抱え込まず、専門家や家族に相談することが大切です。周りのサポートを受けながら、ゆっくりと自分のペースで回復していきましょう。

新しい家族との未来へ

産後トラウマを乗り越え、今では娘の笑顔に癒される日々を送っています。異国での子育ては challengesに満ち溢れていますが、家族と共に一歩ずつ歩んでいきたいと思います。この経験を通して、産後ケアの重要性を改めて実感しました。すべての母親が安心して出産・育児ができる社会の実現を願ってやみません。