統合失調症の影に揺れる家族:ガルヴィン家12人の子どもたちの物語

統合失調症は、未だ多くの謎に包まれた精神疾患です。今回は、第二次世界大戦後に生まれたガルヴィン家の12人の子どもたちのうち、6人が統合失調症を発症したという衝撃的な実話に基づいて、この病気の複雑さと家族への影響について深く掘り下げていきます。ロバート・コルカー著「統合失調症の一族:遺伝か、環境か」(早川書房)から、特に印象的なエピソードをご紹介します。

混乱と葛藤の日々:ポール・マッカートニーだと信じる兄

ガルヴィン家の9男、マットは、統合失調症の症状が悪化し、自分はポール・マッカートニーだと信じ込むようになりました。大学を中退し実家に戻った彼は、既に統合失調症を発症していた長男ドナルド、10男ピーターと共に暮らしていました。この状況下で、12歳の末娘メアリーは、家族の中で唯一の精神的に健康な子どもとして、大きな不安と恐怖を抱えていました。

マットが壊したドアマットが壊したドア

ある日、ピーターと口論になったメアリーは、マットに助けを求めます。しかし、マット自身も病状が悪化しており、メアリーを守ってくれるどころか、彼女を攻撃し始めました。恐怖に慄くメアリーは、両親の寝室に逃げ込み、警察に通報するという、既に何度も経験した手順を踏みます。

精神科医の山田先生(仮名)は、「統合失調症の患者さんは、現実と妄想の区別がつかなくなり、突発的な行動に出ることがあります。家族は、患者さんの安全と自身の安全を守るためにも、緊急時の対応策を事前に準備しておくことが重要です。」と指摘しています。

繰り返される入退院と家族の苦悩

マットは1978年12月7日に精神病院に入院。5日後にはピーターも入院しました。ドナルドも入退院を繰り返しており、3人の兄弟が同じ病院の別々の病棟に入院するという事態に。メアリーは、兄たちが家にいるときは、両親の寝室に鍵をかけて閉じこもるようになりました。

特に、年齢の近い10男ピーターとの関係は複雑でした。ピーターは、メアリーの助けや助言を一切拒否し、治療の必要性を認めようとしませんでした。

閉ざされた心閉ざされた心

家族支援の専門家である田中氏(仮名)は、「統合失調症の患者さんの家族は、患者さんのケアに大きな負担を感じ、精神的に追い詰められることも少なくありません。家族へのサポート体制の充実が不可欠です。」と述べています。

統合失調症と共に生きる家族の未来

ガルヴィン家の物語は、統合失調症という病気が、個人だけでなく、家族全体に深刻な影響を与えることを示しています。早期発見・早期治療の重要性、そして、患者本人だけでなく、家族への支援の必要性を改めて認識させられます。

この記事が、統合失調症に対する理解を深める一助となり、患者さんとその家族が安心して暮らせる社会の実現に貢献できれば幸いです。