幼稚園・保育園で「夕食サポート」広がる 共働き世帯の負担軽減へ

近年、共働き世帯の増加に伴い、子育て世帯の時間はますます限られています。特に夕食の準備は大きな負担となりがちです。こうした状況を受け、幼稚園や保育園が保護者向けに夕食用の惣菜や弁当を販売する取り組みが、全国的に広がりを見せています。これは、忙しい保護者が少しでも心にゆとりを持って子どもと向き合えるよう、園側が積極的にサポートしようとする動きです。

保護者の「時間がない」悩みに応える

幼稚園や保育園では、お迎え時間の延長や預かり保育の利用増加により、保護者が帰宅後に夕食準備にかける時間がますます短くなっています。仕事から疲れて帰宅し、子どもを迎えに行き、さらに買い物や調理までこなすことは、多くの親にとって大きな負担となっています。

国の労働力調査によると、サラリーマン世帯の共働き割合は1980年の約35%から、2024年には約72%へと大幅に増加しています。ベネッセ教育総合研究所の調査(2022年)でも、保育施設で過ごす時間は約30年前より1時間半長くなった一方、夕食のピーク時間は午後6~7時と変わらず、保護者が慌ただしく夕食準備に追われる現状が浮き彫りになっています。

保育園や幼稚園での夕食販売イメージ。忙しい保護者をサポートする惣菜や弁当保育園や幼稚園での夕食販売イメージ。忙しい保護者をサポートする惣菜や弁当

大阪教育大の小崎恭弘教授(保育学)は、現代社会において女性が男性と同様の働き方や責任を求められるようになった結果、夫婦共に家事育児の時間を十分に確保するのが難しくなっている現状を指摘しています。「夕食だけでなく、子どもの朝食や入浴など、これまで家庭で担われてきたことも保育施設がサポートする動きが広がっている」と述べ、このトレンドが単なる食事提供にとどまらない、より広範な家庭支援の方向性を示唆しています。

具体的な取り組み事例:地域に根差したサポート

こうした背景のもと、全国各地の幼稚園や保育園で多様な夕食サポートが展開されています。

北九州市のさいわい幼稚園「おたすけご飯」

北九州市門司区にあるさいわい幼稚園では、毎週火・木曜に「おたすけご飯」として、園の調理室で作る夕食セットを提供しています。「春巻きとひじき煮」のような主菜と副菜のセットで、添加物をできるだけ使わず、家庭で作るのに手間のかかる子どもに人気のメニュー(例:煮込みハンバーグ)を工夫しています。お迎え時に家族の人数に合わせてSサイズ(1、2人前・500円)から購入できます。同園の桐原昌子主任によると、午後7時までの預かり保育利用が増え、保護者から「夕食を作る時間がない」との声が寄せられたのがきっかけ。「実家のようなサポートを」との思いから5年前に始められました。

福岡市アンジュブラン中村学園前:地域にも開放

福岡市城南区の保育園「アンジュブラン中村学園前」も同様に夕食向けの手作り総菜などを販売していますが、「より多くの働く親の役に立ちたい」という考えから、園の保護者だけでなく地域住民も購入できるようにしています。

新たな商機と連携:地域経済への波及

保護者のニーズに応えるこの動きは、地元の飲食店や企業にとって新たな商機も生み出しています。

北九州市八幡西区の聖ヨゼフ幼稚園は今年4月から、近くの弁当店「シェリデリキッチン」と連携し、毎週木曜に夕食用の弁当提供を開始しました。園が注文受付から販売までを代行する形で、「パパやママの助けになりたいという思いが実現できて嬉しい」とシェリデリキッチン側も歓迎しています。弁当はおかずが7、8種類と豊富で、無農薬野菜などの食材へのこだわりも見られます。このサービスを利用する保護者の男性(49)は「夕食準備を省けるので、お迎え後に心にゆとりができる。毎週親子で楽しみにしている」とそのメリットを語っています。

また、東京都内を中心に認可保育所など約30カ所で保護者向け総菜を提供する料理テイクアウト販売会社「マチルダ」も、「子育てしやすい社会になるよう取り組みを広げていきたい」と、同様のサポート拡大への意欲を示しています。

まとめ

このように、幼稚園や保育園が夕食サポートを提供する動きは、現代の共働き世帯が抱える時間的・精神的な負担を軽減し、子育てを支援するための有効な手段として注目されています。専門家の見解や実際の利用者の声からも、この取り組みの重要性と必要性がうかがえます。今後は、地域のリソースとの連携を深めながら、さらに多くの園や地域にこうしたサポートが広がっていくことが期待されます。

【出典】

  • Yahoo!ニュース / 西日本新聞「北九州市の幼稚園、週2日「おたすけご飯」週2日「おたすけご飯」」