日韓造船協力:米国の期待と韓国の課題、未来への展望

米国との連携強化が進む韓国造船業界。その背景には、米国の喫緊の課題である造船業の再建への期待が大きく影響しています。本記事では、日韓造船協力の現状と課題、そして未来への展望について詳しく解説します。

米国造船業の現状と韓国への期待

衰退の一途をたどる米国の造船業。熟練工の不足、脆弱なサプライチェーン、そして低い生産性は、米国海軍の艦船建造や商船建造に大きな影を落としています。活路を見出すべく、米国は韓国の造船技術と生産力に熱い視線を注いでいます。2023年7月の韓米通商協議では、韓国が亀甲船とLNG運搬船が刻まれた記念コインを米国に贈呈。造船分野での協力姿勢をアピールしました。

韓国が米国に贈呈した記念コイン韓国が米国に贈呈した記念コイン

韓国造船業界の挑戦と課題

韓国の造船業界は、米国の期待に応えるべく、様々な取り組みを進めています。ハンファオーシャンによるフィリー造船所の買収はその一例です。しかし、買収後も課題は山積みです。フィリー造船所では、従業員の約3分の2が未熟練の間接雇用であり、熟練工はわずか70名ほど。ハンファオーシャンは韓国から派遣した1000人以上の技術者による人材育成に注力していますが、人材不足と低い生産性は依然として大きな課題となっています。年間の商船建造数はわずか1~2隻程度に留まり、ハンファオーシャンが韓国で建造する年間30~40隻とは大きな差があります。

また、造船に必要な鉄鋼やエンジンなどを供給するサプライチェーンの弱体化も深刻な問題です。HD現代重工業は、米国の防衛産業造船会社ハンティントン・インガルス・インダストリーズとの提携や、資機材企業との協力関係構築を進めていますが、サプライチェーンの再構築には時間を要すると予想されます。

熟練工不足への対策

造船専門家のパク・ミンソク氏(仮名)は、「韓国からの技術者派遣による人材育成は短期的な解決策に過ぎない。米国における造船教育の revitalization と、若年層の造船業界への誘致が不可欠だ」と指摘しています。

日韓協力の可能性と未来への展望

米国での建造が難しい場合、韓国で船舶を建造、もしくは半組み立て後に米国で最終建造するという選択肢も考えられます。しかし、現状では米国の規制が障壁となっています。連邦議会に発議された「海軍準備態勢保障法」や「米国のための船舶法」の行方が注目されます。

MR事業における協力の必要性

韓国国家戦略研究院のキム・テヨン軍事専門研究委員は、「韓国造船会社による米海軍艦艇の整備・修理・オーバーホール(MRO)事業への参入は、価格競争の激化を招く可能性がある。韓国造船所の協議体による一括受注を検討すべきだ」と提言しています。

ハンファオーシャンのキム・ホジュン特殊船事業部常務は、「現状では補給艦のMROしか認められていないが、将来的には軍艦のMROにも韓国企業が参画できるよう、政府間交渉を進める必要がある」と述べています。

日韓の造船業界が協力し、米国の造船業再建に貢献することで、相互に利益を得られるwin-winの関係を築くことが期待されます. 今後の動向に注目が集まります。