社会や政治の分断が進んでいるといわれる米国で最近、よく耳にするのは世代間で広がるギャップだ。銃規制や気候変動問題をめぐり、若者が中心となって抗議活動を展開し、積極的に行動を起こさない大人たちを批判。インターネット上では高齢者と若者が互いを揶揄し、中傷する動画や写真も多く出回っている。高齢者と若者が反目する「世代間戦争」(米紙ニューヨーク・タイムズ)はなぜ起きているのか。(ニューヨーク 上塚真由)
■スラングが大流行
7月半ば。動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」に投稿されたある動画が、瞬く間に拡散された。動画に写るのは白人の中年男性と、白人の若い女性。2人が登場する別々の動画が編集され、1つの画面に収まっている。
中年男性がこうまくしたてる。「ミレニアル(1981年~1996年生まれ)やジェネレーションZ(1997年以降生まれ)は『ピーターパン症候群』だ。彼らは決して大人になろうとしない。彼らは世の中が平等で、政府がすべてを面倒をみてくれるという理想郷を思い描いているが、成長すると、そんな理想郷は存在しないと気付くだろう」
男性が早口で語る中、隣の若い女性は一言も反論せず、笑みを浮かべながら手元の紙に文字を走らせる。最後に女性が「OK BOOMER(オーケー ブーマー)」という文字を見せて、短い動画が終わるのだ。
中年男性が先にネット上に出した動画を女性が加工したとみられるが、この動画をきっかけに「OK BOOMER」というスラング(俗語)が、10代後半から20代の若者の間で大流行した。第二次大戦後の出生率が上昇した時期に生まれたベビーブーマー(1946~1964年生まれ)による若者批判に「もういいよ。議論は十分」と諭し、年配者の「上から目線」をからかう意味合いもある。
■説教にうんざり
ネットでは、「OK BOOMER」を題材にした楽曲を発表したり、Tシャツやコップなどのグッズを制作したりする若者が続出した。