近年、気候変動による海水温の上昇が問題視されてきましたが、今年の韓国西海では逆に低水温が続き、漁業に深刻な影響が出ています。一体何が起こっているのでしょうか?この記事では、西海の現状と原因、そして今後の見通しについて詳しく解説します。
漁獲量の減少:空っぽの漁船と水槽
忠清南道保寧市の大川港。通常であれば活気に満ち溢れているはずの港は、静まり返っています。漁船「チニャン3号」の船長、ヤン・シドンさんは、空っぽに近い漁船を前に嘆息します。「ガソリン代も払えない」と。ワタリガニの最盛期であるにもかかわらず、網にかかるのはタイラギばかり。わずかに見つかったワタリガニもすでに死んでおり、売り物になりません。
alt=死んだワタリガニが水揚げされた様子
港の水槽も同様です。50個以上ある水槽のうち、ワタリガニが入っているのはわずか一つ。それも十数匹しかいません。沿岸漁業人協議会のキム・ドンジュ監査は、「この時期には20~30トンの水揚げがあるはずなのに、今日は1トンにも満たない」と深刻な状況を語ります。
異常事態の原因:長引く「清水」と弱まった暖流
西海の異変は、15日以上も続く「清水」現象が原因とみられています。「清水」とは、近海の底が見えるほど透明な冷水のこと。通常は5日ほどで消えますが、今年は長期化しています。水温が低いままのため、ワタリガニやボラなどの回遊魚が戻ってこないのです。
50年以上ワタリガニ漁を続けているキム・サンテ会長によると、この時期の海水温は通常23~25度ですが、今年は20度を超えていません。国立水産科学院も、韓国海域の水温が平年より0.5~1度低いことを確認しています。
この低水温の原因は、黄海暖流と対馬暖流の勢力が弱まっていることにあると考えられています。これらの暖流は黒潮から分岐し、西海や南海、日本海に熱を供給する役割を担っています。しかし、今年は平年よりも勢力が弱く、海水温が上がらないのです。
専門家の見解:北極の海氷融解との関連性
海洋気候予測センターのクォン・ミンホセンター長は、北極のバレンツ・カラ海の海氷融解が、ウラル山脈付近のブロッキング現象(高気圧による空気の流れの遮断)を引き起こし、4月の寒波につながったと分析しています。
ソウル大学海洋研究所所長のチョ・ヤンギ教授も、東シナ海の低温が暖流の弱体化に影響を与えた可能性を指摘しています。中国東部地域も異例の寒波に見舞われており、これが黄海暖流と対馬暖流に影響を及ぼした可能性があるとのことです。
今後の見通しと対策
海水温の低下は、水産物の価格高騰につながることが懸念されます。漁業関係者は、「今後の対応策を検討するため、多角的な調査が必要だ」と訴えています。気候変動の影響が複雑化する中で、西海の漁業を守るためには、長期的な視点に立った対策が求められています。
まとめ
西海の低水温による漁獲量減少は、気候変動の複雑な影響を示す一例です。漁業関係者だけでなく、私たち消費者もこの問題に関心を持ち、持続可能な漁業の未来について考えていく必要があるのではないでしょうか。