兵庫県知事選を巡る報道は、私たちに多くの疑問を投げかけます。特に、パワハラ疑惑で辞職後に出直し選で勝利した斎藤元彦氏への支持は、なぜこれほどまでに強固なのでしょうか?本記事では、ジャーナリスト横田増生氏の著書『ルポ 「トランプ信者」潜入一年』を参考に、斎藤氏とトランプ前大統領の支持層に見られる共通点を探ります。キーワードは「情報選別」と「信じたい気持ち」です。
情報への向き合い方:自らに都合の良い情報だけを拾う
横田氏によると、斎藤氏とトランプ氏の支持層には、驚くべき共通点があるといいます。それは、「自分たちの知りたい情報だけを知りたがる」という傾向です。彼らは、既存メディアの報道よりも、SNSで発信される情報を重視する傾向にあります。
既存メディアへの不信感
横田氏は、斎藤氏支持者約60人に取材を行いました。その結果、新聞を購読しているのはわずか4人、それも70代と80代の男性のみでした。他の50~60代の支持者は、新聞やテレビの報道を「信じない」と断言しています。
兵庫県の斎藤元彦知事
SNSというフィルターバブル
では、彼らの情報源は何でしょうか?それは、Facebook、X(旧Twitter)、TikTokといったSNSです。これらのプラットフォームは、アルゴリズムによってユーザーの好みに合わせた情報が表示されるため、いわゆる「フィルターバブル」が生じやすくなります。結果として、彼らは自分たちの見たい情報、つまり斎藤氏を擁護する情報ばかりに触れることになります。
事実よりもストーリー:感情を優先する心理
斎藤氏の支持者たちは、パワハラ疑惑に関する事実よりも、彼を擁護する「ストーリー」を求めているようです。
事実確認よりも感情の充足
横田氏によれば、斎藤氏の支持者たちは、事実関係を精査することよりも、自分たちの感情を肯定してくれる情報を重視しているといいます。たとえそれが事実と異なっていても、「斎藤氏は県政のために尽力していた」「告発した職員に足を引っ張られた」といったストーリーを信じたいのです。
トランプ米大統領
情報選別の心理
この現象は、認知バイアスの一種である「確証バイアス」として説明できます。人は、自分の既存の信念に合致する情報を受け入れやすく、矛盾する情報は無視したり軽視したりする傾向があります。斎藤氏の支持者たちは、彼を支持するという信念を維持するために、都合の良い情報だけを選択的に受け入れていると考えられます。
まとめ:情報リテラシーの重要性
斎藤氏とトランプ氏の支持層に見られる「情報選別」と「信じたい気持ち」は、現代社会における情報リテラシーの重要性を改めて示唆しています。多様な情報が溢れる現代において、私たちは自ら情報を取捨選択し、批判的に吟味する能力を養う必要があります。 真偽を見極め、多角的な視点を持つことで、偏った情報に惑わされずに、より良い判断を下すことができるでしょう。