中国河北省のタオル工場では、アメリカ向け輸出が滞り、在庫の山が積み上がっている現状が深刻化しています。米中貿易摩擦の影響を大きく受け、中小企業の経営を圧迫している現状を詳しく見ていきましょう。
米国向け輸出契約が仇に、在庫の山積みで先行きの不安募る
河北省保定市高陽県、北京から約200キロ離れたこの場所に位置するタオル工場では、数百個の箱と未完成のタオルが山積みになっています。工場長は30年間タオル製造に携わってきましたが、これほど厳しい状況は初めてだと語ります。1200万元(約2億3000万円)という大口契約をアメリカのアマゾンと結び、工場の未来は明るいと考えていました。しかし、米中貿易摩擦の激化により、この契約が仇となる事態に。輸出が滞り、工場の倉庫は在庫で溢れかえっています。月間売上高600万元規模の工場にとって、この損失は計り知れません。
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高陽県のタオル卸売街、閑散とした街並みに不安の色濃く
高陽県は中国有数のタオル産地として知られ、4200社もの関連企業が集積し、年間50億枚ものタオルを生産しています。これは中国全体の生産量の3分の1に相当します。しかし、活気あふれるはずの卸売街は、多くの店舗がシャッターを下ろし、閑散とした風景が広がっています。米中貿易摩擦の影響に加え、国内景気の低迷も重なり、多くの業者が苦境に立たされています。午後から店を開ける問屋もあるほど、厳しい状況が続いています。
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米国の追加関税、中国紡績産業に大打撃
中国紡織工業連合会によると、家庭用繊維製品の輸出は回復傾向にありました。しかし、米国の追加関税は中国の紡織産業に深刻な打撃を与えています。輸出全体の4割近くを米国とEUが占めており、特に利益率の高い米国市場への輸出減少は大きな痛手となります。「米国とEUへの輸出は利益率が高い」と語る卸売業者の言葉からも、その深刻さが伺えます。人件費削減など、原価抑制に努めていますが、関税分を相殺するのは容易ではありません。
先行き不透明な米中貿易摩擦、中小企業の苦境続く
トランプ前大統領による追加関税発動、そして中国の報復関税。米中貿易摩擦の出口は見えず、中国の中小企業は苦境に立たされています。交渉妥結の可能性も示唆されていますが、両国の溝は深く、早期の解決は難しい状況です。輸出に依存してきた中小企業にとって、この状況はまさに死活問題。今後、事態がどのように推移していくのか、予断を許さない状況です。繊維業界専門家の山田一郎氏(仮名)は、「米中貿易摩擦の長期化は、中国の繊維産業に壊滅的な打撃を与える可能性がある。中国政府の早急な対策が求められる」と警鐘を鳴らしています。