新年度の始まりから1カ月。みなさんの中には、この春からお子さんが保育園や幼稚園に通い始めた方もいることだろう。
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家庭の外での人々との関わりは、成長していく子供たちにとって大きな意味をもつ。同年代の子供たちとの交流はその最たるものかもしれない。遊びや学びの場での触れ合い、そして時にはぶつかり合いを通じて、子供たちは心身ともに多くのことを吸収していく。この点については、世代を問わず多くの人が実感をもって同意するはずだ。
だが、同じく子供どうしの交流が生まれる機会であるにもかかわらず、保育施設や教育機関に子供を預けることに対しては否定的な意見もある。「小さな子を親から離すなんてかわいそう」というわけだ。しかし、本当にそうだろうか?
■「保育園の洗礼」は子供を守るかもしれない
子供が保育園などで共同生活を送るメリットの1つに、「家庭以外の環境に早くから触れられること」がある。
核家族化・少子化が進む現代、日々の生活の中で子供が親以外の人と接する機会は乏しくなりがちだ。家庭の外で施設スタッフや他の子供たちと過ごすことにより、子供は家庭とは異なるルール、親とは違う価値観の存在に触れ、社会の中での生き方を手探りで学んでいく。
医師の金森啓太氏(東北大学大学院医学系研究科・大学院生)、大田千晴氏(同研究科・教授)らが2024年に発表した研究では、1歳未満から保育施設を利用していた子供は、3歳まで保育施設を利用しなかった子供と比べて、3歳時点でのコミュニケーション、問題解決、個人・社会(生活スキルや他者との関係)が高くなる傾向が示されている。
また、近年注目されているのが、共同生活が子供の免疫系に与える作用である。
入園直後に子供が次から次へと感染症にかかる、通称「保育園の洗礼」に悩まされる家庭は多い(しかも大抵の場合、親もそれをうつされて子供よりも悪化するまでが1セットだ)。しかし、実はこのような軽い感染経験の積み重ねには、後に子供の体を守る作用があるようなのだ。