日韓関係の悪化で訪日韓国客数は5年5カ月ぶりの水準まで落ち込んだが、関係悪化の影響は観光関連にとどまらず、さまざまな業種へと拡大している。韓国国内での事業不振から撤退や業績の見直しを強いられる企業も出てくるなど、関係悪化の影響は日本の国内外へと広がり、深刻度を増すばかりだ。
アジアからの訪日客に人気の黒門市場商店街(大阪市中央区)では、韓国客数が急減している。同商店街振興組合の吉田清純副理事長によると、統計はないものの、今年7月から10月の韓国人客はピークだった今年前半までに比べ8~9割減少したようだという。日本一の超高層ビル「あべのハルカス」(同市阿倍野区)に本店を置く近鉄百貨店では、韓国人客による3~8月の免税品売り上げが前年同期比で約2割減った。
影響は全国に広がる。JR北海道の発売する列車の乗り放題切符「北海道レールパス」の4~9月の発売実績は、目標を15%下回った。JR九州の運航する日韓高速船の乗客数については、8月から3カ月連続で韓国人利用者が前年同月比7割減だった。
一方、日韓関係悪化の影響は、観光や小売業などの日本国内での事業だけでなく、韓国での事業にも及んでいる。
オンワードホールディングスは、来年2月までに韓国市場から撤退する。韓国ではゴルフウエアブランドを展開してきた。今後は運営中の全26店舗を閉鎖するだけでなく、韓国子会社も清算する。保元道宣社長は「日韓摩擦の影響で、このところ業績が悪い状態が続いていた」と説明する。
売上高の約半分を韓国事業が占めるスポーツ用品大手「デサント」は、令和2年3月期の連結売上高予想を従来の1440億円から1308億円に、最終利益予想を53億円から7億円に下方修正した。同社製品が韓国で不買運動の対象となり、7~9月の韓国内の売上高は前年比で3割減少。10月も同様の傾向が続いた。小関秀一社長は「収益の柱が赤字化してしまう。改善の兆しが見えない」と困惑している。
ビールも不買運動の影響が長期化している。アサヒグループホールディングスによると、「スーパードライ」の韓国での販売は日本に次ぐ実績を誇り、2011年から8年連続で輸入ビールとして韓国内でのシェア1位を獲得してきた。不買運動の長期化で「ナンバーワンを維持するのは難しい状況だ」と分析する。
23日には日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が失効する見通し。日韓関係の悪化は改善する兆しが見通しにくい状況だけに、日本企業の韓国関連事業の見直しがさらに進む可能性もありそうだ。