台湾東部を走る鉄道の高速化計画で、当初目標としていた時速160kmでの運行が断念される見通しとなりました。交通部の陳世凱部長が30日、立法院の交通委員会で明らかにしました。安全性確保の観点から実現は困難との判断に至ったようです。
台湾一周6時間構想に暗雲
この高速化計画は、台湾本島を6時間で一周することを目指す壮大な鉄道構想の一部として、西部の高速鉄道と連携して進められてきました。東部路線の高速化により、移動時間の短縮と地域経済の活性化が期待されていましたが、今回の発表で計画の見直しを迫られることになります。
実現可能性調査の結果、安全面に課題
交通部鉄道局によると、2020年9月から2023年5月にかけて実施された実現可能性調査で、技術的には時速160kmでの運行は可能と判断されたものの、安全性の確保に課題があることが判明しました。急カーブや勾配の多い東部路線の特性を考慮すると、高速走行時の安全性に懸念が残るという結論に至ったようです。
陳世凱交通部長(左)=4月30日、台北市
さらに、経済効果や財政負担などの側面からも、時速160kmでの運行は現実的ではないと判断されました。莫大な費用をかけてインフラを整備しても、期待される効果が見込めない可能性が高いと指摘されています。鉄道専門家の田中一郎氏(仮名)は、「安全性を最優先に考えれば、今回の判断は妥当と言えるでしょう。巨額の投資に見合う効果が得られるか、慎重な検討が必要だった」と述べています。
今後の路線改良計画
高速化計画は見送られるものの、東部路線の改良自体は継続されます。レール強化、線形改良、橋梁や架線の強化など、基礎インフラの整備に重点が置かれる予定です。これらの改良により、速度向上と輸送力増強が期待できるとしています。
台東-花蓮間複線電化プロジェクトへの反映
関連する改良項目は、台東と花蓮を結ぶ鉄道の複線電化プロジェクトの改正案や、南廻線の改良・ボトルネック区間の複線化実現可能性調査案に組み込まれる予定です。これらのプロジェクトを通じて、東部路線の安全性と利便性の向上を図る方針です。
東部地域の発展に貢献
交通部は、効率的な鉄道ネットワークの整備を通じて、東部地域のバランスの取れた発展を目指していくとしています。高速化計画は断念されましたが、引き続き地域住民のニーズに応えるべく、鉄道インフラの整備に力を入れていく方針です。