国民民主党の玉木雄一郎代表は、7月9日に配信されたABEMAの報道番組「Abema Prime(アベプラ)」に出演し、参院選(20日投開票)において、当初山尾志桜里元衆院議員の擁立を決定していたことについて、改めてその真意を説明しました。番組では、党の選挙目標や憲法改正に関する自身の考えを詳しく述べました。
玉木代表は、今回の参院選で「非改選の5議席を除き、新たに16議席を獲得し、参院で合計21議席体制にしたい」との目標を表明しました。これにより、「予算を伴う法案を国民民主党単独で提出可能になる」と説明し、現在の日本には成長戦略が不可欠であることなどを強調しました。
玉木代表の主張を聞いたギャルタレントのあおちゃんぺ氏は、「聞けば聞くほど、すごくまともそうな人なのに、何でスキャンダルがあった人を推したりとか、ちょっと考えれば支持率下がるなって、分かることをしちゃうのかなって。もっと優秀な人いなかったのかな」と、山尾氏に関する過去の問題を示唆しつつ、率直な疑問を投げかけました。このストレートな質問にはスタジオに笑いが起こり、玉木代表も苦笑いを浮かべる場面がありました。
参議院選挙に関連する会見の様子
憲法改正、特に9条2項への強い言及
玉木代表は表情を立て直し、「ご本人が選挙に出ているので、名前も含めて差し控えますが」と山尾氏の名前は明言しませんでしたが、「あえて言うと、憲法改正をしたかったんですよ」と、擁立を検討した理由を説明しました。さらに、「憲法9条2項の改正をやるべきだと思っている」と自身の憲法観に踏み込みました。
「自衛隊明記」だけでは不十分な理由
玉木代表は、「アメリカもこういう状況になっている時に、自分の国を自分で守るということで言うと、国家の基本法である憲法、特に軍事的貢献力…」と述べたところで、共演者のひろゆき氏が「自衛隊保有を明記するってことですか?」と質問。これに対し玉木代表は「そんなの意味ないんですよ」と即答しました。「組織名をいくら書いたって何の意味もなくて、その自衛隊が何をできるか、ということを憲法上明記しなければ意味がない」と、単なる組織名明記案では憲法改正の本質的な目的は達成できないとの考えを示しました。
自衛権と自衛隊員の立場の明確化
玉木代表は、自衛隊員の子どもの立場に重ねるような例示で説明しました。「お父さんが務めている自衛隊という組織の違憲性がなくなっても、お父さんが務めている組織がやっていることについては依然として違憲性が残る案が、今の自民党案であり維新案なんですよ」と述べ、他党の改正案が抱える問題を指摘しました。ひろゆき氏が「軍隊が何をして何をしちゃいけないか明確にして、合法な中でやってますよ、とお父さんが胸をはって言えるようにしたい」とまとめると、玉木代表は「そういうことです」と同意しました。国民民主党としては、「自衛隊という組織を憲法上明記することはもちろん重要だけれども、自衛権というね」と、組織だけでなく「自衛権」の概念を憲法に位置づける重要性を訴えました。
現行憲法9条2項の解釈が抱える問題
現行の憲法9条2項「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」との条文にも言及し、政府の「戦力じゃない、警察の延長とあくまで位置付けている」という解釈を指摘しました。「外国に行った場合は軍隊だけど、国内的には軍隊ではない、という、どう考えたって理解できないような答弁をいまだにするわけですよ。それはここで変えるべき、戦後80年」と述べ、曖昧な解釈の現状を批判し、憲法改正の必要性を強く訴えました。
ミュージカル「アニー」初代アニー役だった山尾志桜里元衆院議員の若き日
山尾氏の経歴と候補者擁立見送りの経緯
山尾氏は、かつて国民民主党に所属していた際に憲法調査会長を務めるなど、憲法に精通している人物です。国民民主党は5月14日に山尾氏の参院選への擁立を発表しましたが、その直後から過去の問題がSNS上で再び問題化しました。山尾氏自身は6月10日に出馬会見を開きましたが、党は翌11日に公認を見送ることを決定しました。山尾氏はその後、無所属で今回の参院選に立候補し、選挙活動においても憲法9条2項改正の必要性を訴え続けています。玉木代表の説明は、こうした経緯を踏まえつつ、山尾氏を候補者として検討した背景に、党が重視する憲法改正論議を深めたいという意図があったことを改めて示す形となりました。