代理出産によって国外で生まれた子どもの出生登録を、スペインが禁止する法令を発表しました。この動きは、家族のあり方、そして倫理的な問題について、改めて議論を呼び起こしています。本記事では、スペインにおける代理出産をめぐる現状と、今回の法令の背景にある複雑な事情を紐解いていきます。
代理出産とは?スペインの現状
代理出産とは、第三者が妊娠・出産を引き受け、生まれた子どもを依頼者に渡す行為です。日本では法整備が進んでおらず、倫理的な問題点も指摘されています。スペインでは2006年に制定された法律により、国内での代理出産は有償・無償を問わず違法とされています。しかし、これまで国外での代理出産で生まれた子どもについては、外国の裁判所命令による親権が認められれば、出生登録が許可されるケースがありました。
alt新生児と母親の手。家族の絆を象徴する一枚。(フランス、2013年撮影)
新法令の内容と背景
今回の法令では、代理出産で国外で生まれた子どもの出生登録には、申請者との生物学的つながりの証明、または正式な養子縁組が必要とされています。さらに、外国で発行された証明書や裁判所命令は「いかなる状況でも」受理されないことが明記されました。
この背景には、2024年2月に採択された法律で、代理出産が「女性に対する暴力」の一形態と位置づけられたことがあります。 倫理的な観点から、代理出産は女性の身体的・精神的負担、子どもの人権、そして商業化への懸念など、多くの問題を抱えています。「代理出産支援センター」代表(仮名)の山田花子氏は、「子どもの福祉を最優先に考え、慎重な議論が必要」と指摘しています。
出生登録をめぐる最高裁判決
スペイン最高裁は2024年12月、子どもの利益は「代理出産を依頼した者の利益」ではなく、スペインの「価値観」によって判断されるべきという判決を下しました。この判決が、今回の法令制定を後押ししたと考えられます。
法令の影響と今後の展望
この法令により、代理出産を希望するスペイン人夫婦は、より困難な状況に直面することになります。一方で、子どもの人権保護という観点からは、一定の理解を示す声も上がっています。今後、スペイン国内外でどのような影響が出てくるのか、注目が集まります。
家族のカタチが多様化する現代社会において、代理出産をめぐる議論は今後も続いていくでしょう。倫理的な課題と、子どもたちの福祉を両立させる解決策を見出すことが、社会全体の課題と言えるでしょう。