中国の軍民両用艦建造、台湾有事想定か?衛星画像が示す実態

中国広東省広州市で建造されている一隻の艦船が、台湾有事を想定した軍民両用艦である可能性が浮上しています。読売新聞と米宇宙企業の衛星画像分析によって明らかになったこの艦船は、平時は海洋調査など民間の用途に用いられながら、有事には中国軍によって揚陸艦として運用される可能性が高いとみられています。この記事では、衛星画像が捉えた軍民両用艦の実態と、その背後にある中国の戦略について詳しく解説します。

軍民両用艦の実態:衛星画像が示すもの

中国広東省広州市の造船所で建造中の軍民両用艦。甲板には何も描かれていない。左上にステルス無人作戦艇が停泊している。中国広東省広州市の造船所で建造中の軍民両用艦。甲板には何も描かれていない。左上にステルス無人作戦艇が停泊している。

広州市南沙区竜穴島の造船所で建造されているこの艦船は、米宇宙企業プラネット・ラボが2024年10月23日に撮影した衛星画像で初めて確認されました。その後、米宇宙企業マクサー・テクノロジーズが2025年3月21日に撮影した画像でも、その存在が確認されています。読売新聞と国家基本問題研究所の分析によると、この艦船は中国の軍事関連サイトにも掲載されており、民間調査船を示唆する船名が記されている一方で、軍艦に付与される艦番号は確認されていません。

軍事転用を想定した設計

ヘリパッドが2か所描かれた軍民両用艦。ヘリパッドが2か所描かれた軍民両用艦。

幅約40メートル、長さ約200メートルという船体は空母に類似していますが、中国軍の空母(300メートル超)と比較すると短く、戦闘機の運用には適していません。そのため、ヘリコプターや小型無人機の母艦としての役割が想定されます。2025年3月の衛星画像では、甲板上に2箇所のヘリパッドが確認され、試験航海も実施された可能性が示唆されています。

中国の戦略:軍民融合による輸送能力強化

国家基本問題研究所企画委員の武居智久・元海上幕僚長は、中国が「軍民融合」の名の下に商船を軍事輸送力として活用する体制を強化していると指摘しています。この軍民両用艦もその一環であり、年間約10隻の建造が可能と推測されています。平時には海洋調査や探査を行い、有事には揚陸艦として兵員・兵器の輸送や無人機による攻撃・情報収集に利用される可能性があります。

台湾有事への備え

この軍民両用艦の建造は、中国が台湾有事を見据えて海上輸送能力の増強を図っていることを示唆しています。迅速な兵力展開や物資輸送は、軍事作戦の成否を左右する重要な要素です。中国は、民間の船舶を軍事目的に転用することで、コストを抑えつつ輸送能力の不足を補完しようとしていると考えられます。

まとめ:中国の海洋戦略を読み解く鍵

中国の軍民両用艦建造は、その海洋戦略を理解する上で重要な手がかりとなります。経済活動と軍事活動を密接に結びつける「軍民融合」戦略は、中国の軍事力増強に大きく貢献しています。今後の中国の動向を注視していく必要があります。