【ロンドンの甃】投票できない市民の思い





19日、英総選挙に向けてロンドンで行われた初の党首討論で、最大野党・労働党のコービン党首(右)と論戦を繰り広げる与党・保守党党首のジョンソン首相(ロイター)

 「私たちの主張は『声なき声』にすぎない。総選挙のことを考えるだけで悔しさがこみ上げてくる」

 12月12日に迫る英総選挙で有権者の声をロンドン市内で拾っている最中、このような意見を耳にした。声の主はロンドンに約10年間住んでいるというドイツ人の女性会社員(38)だった。

 欧州連合(EU)出身の移民は原則、総選挙で投票できない仕組みだ。ただ、EU離脱が争点となる今回の総選挙は、英国民だけでなく、EU出身の移民にとっても影響が大きい。

 EU出身者は現在、原則として査証(ビザ)なしで英国で居住・就労できるが、英国がEUから離脱すれば、その権利が失われる恐れがある。ドイツ人女性は「人生を左右する問題なのに、結果を眺めることしかできないのは残念だ」とため息をついた。

 英国には現在、300万人以上のEU出身の移民がいるとされる。英国に住み続けることを希望するEU出身者は、英国の残留を願う人が圧倒的に多い。

 「英国はEUの一部だと今も信じている。僕らが投票すれば、(離脱を主張する)与党・保守党が勝つことはないだろうに…」

 EU出身者の別の移民の知り合いもそうこぼした。1票にもならないが、投票がかなわない彼らの気持ちの重さを感じた。(板東和正)



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