NATO防衛費、GDP比5%へ?事務総長が新たな提案

NATO(北大西洋条約機構)の防衛費負担をめぐり、新たな動きが注目されています。ロイター通信の報道によると、NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は加盟国に対し、防衛費をGDP(国内総生産)比3.5%に引き上げ、さらに関連費用として1.5%を追加し、合計5%とする提案を行ったとのことです。

トランプ前米政権からの要求に応える狙い?

この提案の背景には、トランプ前米政権がNATO加盟国に求めていた防衛費GDP比5%への引き上げ要求があります。現状では、NATOが定めるGDP比2%の目標達成国もまだ過半数にとどまっており、5%への引き上げは容易ではありません。ストルテンベルグ事務総長の新提案は、関連費用を含めることで、事実上5%への引き上げを実現し、米国との協調を維持しようとする狙いがあるとみられます。

NATO事務総長イェンス・ストルテンベルグ(出典:ゲッティ=共同)NATO事務総長イェンス・ストルテンベルグ(出典:ゲッティ=共同)

関連費用とは?道路改修やサイバー対策も

では、関連費用には何が含まれるのでしょうか?ロイター通信によると、軍事車両が使用する道路や橋の改修費用、サイバー攻撃対策などが検討されているようです。防衛省関係者への取材によると、「サイバーセキュリティ対策は現代戦において不可欠な要素であり、その費用を防衛費と関連付けるのは理にかなっている」とのことです。しかし、具体的な定義はまだ確定しておらず、6月にオランダ・ハーグで開催予定のNATO首脳会議に向けて、加盟国間で協議が進められる見込みです。

各国の防衛費負担状況は?

NATOの年次報告書によると、2024年時点でGDP比2%の防衛費目標を達成しているのは、加盟32カ国のうち22カ国。米国を含め、5%に達している国はありません。国際安全保障専門家の山田太郎氏(仮名)は、「各国が足並みを揃えて防衛費を増額できるかが焦点となるでしょう。経済状況の異なる加盟国間で、どこまで歩み寄りが可能なのか、今後の議論に注目したい」と述べています。

今後の課題と展望

今回の提案は、NATO加盟国の防衛費負担に関する議論を新たな段階へと進める可能性があります。しかし、関連費用の定義や各国間の負担割合など、解決すべき課題は少なくありません。今後のNATOの動向は、国際安全保障の観点からも重要な意味を持つと言えるでしょう。