対馬の観音菩薩坐像、100日間の法要終え日本へ返還

対馬の観音寺から盗難され、韓国に持ち込まれていた長崎県指定有形文化財「観世音菩薩坐像」が、100日間の法要を終え、ついに日本へ返還されることになりました。この仏像は、韓国中部瑞山市の浮石寺が所有権を主張し、長らく保管されてきました。

盗難から返還までの経緯

2012年、対馬の観音寺から盗難された観世音菩薩坐像は、韓国に持ち込まれ、その後浮石寺が所有を主張する事態となりました。浮石寺側は、この仏像は過去に倭寇によって略奪されたものであり、本来は自寺のものであると主張してきました。 日本側は返還を求め、長い交渉の末、ついに返還が実現することになりました。

対馬の観音寺から盗難された観世音菩薩坐像(共同)対馬の観音寺から盗難された観世音菩薩坐像(共同)

浮石寺の主張と信徒の想い

5日に行われた100日間の法要終了後、浮石寺の円牛住職は、改めて仏像は倭寇に略奪された文化財であると主張しました。また、信徒代表の女性は、仏像は悲しみに満ちた表情で浮石寺に帰りたいと願っていると述べ、日本に戻った後も再び返還に向けて努力する意思を示しました。 これらの発言からは、浮石寺と信徒にとって、この仏像がいかに大切な存在であるかが伺えます。

文化財返還問題の難しさ

この一件は、文化財の返還をめぐる国際的な問題の難しさを改めて浮き彫りにしました。文化財は、歴史や文化を伝える貴重な遺産であると同時に、時に国家間の紛争の火種となることもあります。 専門家の中には、「文化財の所有権に関する国際的なルール作りが必要だ」と指摘する声もあります。 例えば、国際博物館会議(ICOM)は、盗難された文化財の返還に関する倫理規定を設けていますが、法的拘束力はありません。

今後の展望

観世音菩薩坐像は10日に日本側関係者に引き渡され、12日には対馬へ戻ることになっています。 長崎県対馬市教育委員会の担当者は、「仏像が無事に戻ってくることを心待ちにしている。 今後は、適切な方法で保管し、市民の皆様に公開したい」と語っています。 今回の返還は、日韓関係にとって一つの前進となることが期待されます。

韓国・瑞山の浮石寺が保管していた観世音菩薩坐像韓国・瑞山の浮石寺が保管していた観世音菩薩坐像

長年の懸案事項であった観世音菩薩坐像の返還が実現したことで、今後の日韓関係の改善にも繋がることを期待したい。 また、この出来事を教訓に、文化財保護の重要性を改めて認識し、盗難防止対策の強化や国際的な協力体制の構築が進むことを願います。