出生時性比の不均衡が劇的に改善、「男女産み分け」による女児中絶が過去最低水準に

近年、男の子よりも女の子を望む声が高まっている。これと並行し、世界では注目すべき現象が静かに起きている。女の子という理由だけで行われてきた妊娠中絶の習慣が、近年劇的に低下しているのだ。この悪習は、安価な超音波検査で性別が判別可能になった1980年代に広まったものだが、英「エコノミスト」誌が報じているように、その流れが変わりつつある。

不均衡の歴史と現状

2000年時点では、出生時性比の予測値に基づくと、女の子の赤ちゃんの数が異様に少なく、世界で160万人の女児が「消えている」と計算されていた。これは、男女の自然な出生比率から大きく逸脱した数値である。

出生時性比の改善を示す赤ちゃんのイメージ - アジアでの男女産み分けによる女児中絶の減少傾向出生時性比の改善を示す赤ちゃんのイメージ – アジアでの男女産み分けによる女児中絶の減少傾向

しかし、この状況は変化し、2025年にはその予測値が20万人台で推移すると見られており、低下傾向は継続している。この逆転現象は、以前は男の子を強く望む声が高かった地域ほど、驚くべき速さで進行中だ。男女の自然な出生時性比は、女児100人に対し男児105人前後であり、男児は早逝率がやや高いため、生殖年齢ではほぼ同数となる。

アジアにおける顕著な変化

以前、アジア全域では出生時性比において男児が突出していたが、現在ではほぼ自然な100に近い値に収束している。例えば、中国では2006年のピーク117.8から2024年には109.8へ、インドでは2010年の109.6から106.8へとそれぞれ減少した。特に劇的な変化を見せたのは韓国で、1990年には115.7という高い数字を記録したが、いまでは105前後と完全に正常範囲内に落ち着いている。

「ジェンダーサイド」の減少とその意味

2010年に英「エコノミスト」誌は、女児の大量中絶を(大量虐殺を意味する「ジェノサイド」にかけて)「ジェンダーサイド」と呼び特集したが、この「災厄」が世界的に減少していることは喜ばしい。これは第一に、女児の間引きを是とする伝統的な考え方が薄れつつあることを示唆している。

一部の文化圏では、大人になって結婚し、夫の家に入り夫の親族に仕える娘よりも、自分たちの老後の面倒を見てくれる息子が必要だという期待から、男の子が強く望まれてきた。このような性差別的な発想が完全に消滅したわけではないものの、それが薄れつつあるという証拠が示されたことは、社会の変化として歓迎すべき点である。

出生時性比の不均衡が改善し、男女産み分けによる女児中絶が減少傾向にあることは、世界的な社会の進歩を示す重要な兆候と言えるだろう。これは、伝統的な性差別意識が徐々に薄れ、娘に対する価値観が見直されていることの現れであり、より平等な社会への一歩を示唆している。

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