〈彼女の運命は、占領されたウクライナ領内やロシアで拘束されている何千人もの人々、同じくロシア当局による弾圧といった“悲劇”を思い起こさせるものです〉(欧州連合代表部の声明、一部抜粋して邦訳)──2025年2月、ロシアで勾留中に死亡したウクライナ人フリージャーナリスト、ビクトリア・ロシチナさん(享年27)の遺体がウクライナに返還された。彼女の遺体には、脳の一部・眼球・喉頭が摘出されるなど激しい拷問を受けた痕跡が複数見られたという。
大手紙国際情報記者が解説する。
「ロシアのウクライナ侵攻を取材していたロシチナ氏は、2023年8月、ロシア占領地のザポリージャ地域エネルホダル市で行方不明となっていました。のちに、ロシアの治安機関・連邦保安局(FSB)に捕えられ、露・タガンログ市の刑務所で勾留されていたことが判明。2024年秋、ロシア国防省がロシチナ氏の家族に宛てた手紙によると、2024年9月に刑務所内で死亡したとのことです」(大手紙国際情報記者)
ウクライナのオンライン新聞『キエフ・インディペンデント』によると、ロシチナ氏は10代の頃から戦争や組織犯罪などを扱うジャーナリストとして活動していたという。
10代から記者として活動、国際的な表彰も受けていた
「2022年2月にロシアが本格的なウクライナ侵攻を始めたときには、最初に占領下に入った地区の一つであるルハンシク州で取材を開始。同年3月にはウクライナ南部のヴァシリフカでロシア軍に拘束されるも逃げ、報道を続けていました。
彼女のジャーナリズム精神溢れる報道は国際的にも評価されており、2022年6月には、米・ワシントンD.C.に本拠地を置く『国際女性メディア財団(IWMF)』より『第32回ジャーナリズム勇気賞』を受賞。しかし、報道を続けるために表彰式の出席を拒否したとのことです。
また、〈真実を話すことを恐れたことはありません。人々は真実を知る必要があり、罪ある者は責任を問われなければならない。私はそれを勇気ではなく、むしろ私の職業上の義務だと考えています〉とのコメントを寄せ、戦争報道に対する強い意志を表明していました」(同前)
勇敢なジャーナリストだったロシチナ氏の遺体に、惨たらしい複数の拷問の痕跡が残されていたという報道は、現地の人々に強い衝撃を与えた。