(数多 久遠:小説家・軍事評論家、元幹部自衛官)
5月3日、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領空に中国海警局のヘリコプターが領空侵犯を犯しました。
2024年8月26日、長崎県・男女群島周辺を旋回しながら2分間日本の領空を侵犯した中国軍機Y-9
ロシア機も含め、最近は領空侵犯が頻発しており、またかと思う方も多いでしょう。しかしながら、今回の領空侵犯は、過去の事例とは大きく異なり、数年後にはエポックメイキングな事例だったと認識される事件である可能性があります。
また、今回の事例は、今後同種の事例が発生した場合には、警告射撃や我が国の空港に誘導する等の強硬な措置を実施しないと、尖閣が国際司法裁判所に持ち込まれた場合には、不利になる可能性を生じさせかねない事例でした。
今回の領空侵犯が、過去の事例とどう異なり、毅然とした対応をしなければ、どのような影響を生じるのか解説したいと思います。
■ 尖閣諸島周辺で起こったこと
(1)中国海警局所属の船舶4隻が、5月3日12時18頃から13時3分頃まで、尖閣諸島の南小島、魚釣島、久場島周辺の領海に侵入していた(監視をしていた第11管区海上保安本部の巡視船が確認)。
(2)石垣島から離陸した民間機が、尖閣方面に進出。
(3)南小島周辺の領海に侵入していた海警船2303から艦載ヘリが12時21分に離陸。領海内であったため、離陸と同時に領空侵犯となる。着艦する12時36分までの15分間、領空侵犯を継続。なお、海警船2303が領海を出たのは12時58分頃。
以下は、米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員の高橋浩祐氏のXへの投稿である。
第11管区海上保安本部提供の中国海警局2303「梅山」とその飛行甲板から飛行した機体番号15906の「直9型ヘリ」ことZ-9(H425)。3枚目の写真は私が画像を拡大処理。 pic.twitter.com/c50giQGlFx
— 高橋浩祐(たかはし こうすけ)Takahashi Kosuke (@KosukeGoto2013) May 3, 2025 (4)11管区海上保安本部から通報を受け、航空自衛隊が対領空侵犯措置としてスクランブル(離陸時刻等の情報なし)。
■ 今回の領空侵犯の問題点とは
中国機による領空侵犯は、過去3度発生しています。
2012年には、国家海洋局(現在の中国海警局)所属の固定翼機が魚釣島周辺の領空を侵犯し、2017年には領海に進入していた海警局の船舶が小型無人機を飛行させています。いずれも、偵察や領空侵犯の実績作りが目的とみられます。