インドが7日、カシミール地方でのテロ対策を理由に、パキスタン領を攻撃した。核保有国同士の対立はどうなるのか、伊藤融・防衛大学校教授(南アジア外交・安全保障)に聞いた。
カシミール地方のインド側支配地域で4月にあったテロ事件を巡り、インドが報復に出るのは時間の問題だった。インドのモディ首相らも公言しており、攻撃をしない選択肢はなかっただろう。
2019年にあったジャム・カシミール州でのインドの治安部隊40人が死亡したテロの際も、インドはパキスタンを空爆した。こうした経緯から反撃を受ける可能性もあり、インドは慎重になりつつ、国民に満足感を与えられる攻撃は何だろうかと考えていたと思う。
結果、エスカレーションはさせないということを明確にしつつ、SNS(交流サイト)に動画をアップするなどし、「やられたらやり返す」ということを国民に示した。
一方、パキスタンはインドの戦闘機を撃ち落としたと主張するが、インドは認めておらず、もう少し攻撃をしかけてくるかもしれない。インド軍の施設や人員に大きな被害が出れば、緊張が高まる可能性はある。
ただ両国ともエスカレーションを望んではいないだろう。緊張を高め、国際社会に助けてもらおうとするのがパキスタンの戦略で、インドはそれに乗りたくはない。パキスタンも、経済状況などを含めると全面戦争をする余裕はない。
カシミール問題は、特にパキスタン側にとっては国家のアイデンティティーに関わり、今回の事件に関わらず解決は非常に困難だ。これまでは米国が対話を促す役割を担ったが、トランプ米政権が内向きになる中、サウジアラビアやイラン、中国などが危機管理の役割を果たしていく可能性がある。【聞き手・畠山哲郎】