北アルプス燕岳の登山口に通じる長野県安曇野市の県道槍ケ岳矢村線で路面が崩れ車両が通れなくなっていることを受け、地元観光関係者らが大型連休中、崩落箇所を挟んで定期バスと無料送迎車を運行し登山者らの足を確保した。手探りの協力で「ひとまず急場をしのいでいる状態」(安曇野市観光協会)だが、復旧見通しは立っていない。登山シーズンの本格化を前に、関係者らは気をもんでいる。
大型連休前に路面崩落、作業員1人死亡
事故発生は4月14日。長さ約10メートル、幅約2・5メートルにわたり路面が崩落し、現場にいた作業員1人が重機と共に流され亡くなった。
明るい時間帯は徒歩で通行可能
現場を含む12・2キロ区間は当時冬季閉鎖中。県は同18日に予定していた解除を延期し、25日から明るい時間帯に限り現場を歩いて通れるようにした。例年麓から登山口まで定期バスを運行する交通事業者は崩落箇所手前までバス運行を始めた。
登山口まで6キロ…観光関係者が無料送迎始める
ただ崩落箇所から登山口まではさらに6キロほどある。温泉施設や山小屋、市観光協会は「登山にかける時間を十分に取ってもらう」と、26日午後からそれぞれが所有するワンボックスカーなどで無料送迎を始めた。
ある観光関係者は「いつもはライバル同士だが、今はそんなことは言っていられない」と話す。無料送迎は当初、大型連休中のみの予定だったが、5月いっぱいは続けることに。その後も復旧の動きを見ながら対応を考えるという。
復旧の見通しは立たず 登山者増えたら「対応難しい」
県安曇野建設事務所によると、復旧見通しは立っていない。市観光協会の望月淳利事務局長は、6月中旬以降、槍ケ岳や常念岳方面へ縦走する登山者が増えるとし、「現状の態勢では対応が難しくなる」と不安視する。
「早く車が通れるようにして」
安曇野市は山岳観光を柱としており、燕岳登山はその代表格。定期バスを運行する南安タクシーの小岩井清志社長は「できるだけ早く車両が通れるようにしてほしい」と話している。