ロシアによるウクライナ侵略の停戦交渉を巡り、プーチン露大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の主導権争いが激しくなっている。両氏ともに停戦に後ろ向きとの非難を受けないよう戦略を練っているとみられる。
「我々は何度も戦闘停止に向けた提案を行った。ウクライナ側との対話を拒否したことはない」
11日未明、露大統領府で行った記者発表で、プーチン氏は露側の対話姿勢を繰り返しアピールした。これまではゼレンスキー政権の正統性を否定し、交渉相手ではないと主張していた。
プーチン氏が方針を転換し、15日にトルコで直接協議を行うことをウクライナに提案したのは、鉱物資源権益に関する合意を交わすなど米国とウクライナの関係が改善していることに加え、トランプ米大統領が「30日間の無条件停戦」を要求するなど、圧力を強めたためとみられる。
ゼレンスキー氏は10日、英仏独ポーランドの首脳とキーウで会談し、トランプ氏の主張に沿った形で、無条件停戦を12日から開始するよう露側に求めていた。
ただ、プーチン氏には、露側のペースで交渉を進める狙いがあるようだ。11日の記者発表では、直接協議の場所や時期を設定した一方で、30日間の無条件停戦に応じるかどうかは言及せず、記者団との質疑応答も行わなかった。
停戦の「本気度」にも疑問が残る。タス通信によると、露外務省のマリア・ザハロワ報道官は11日、直接協議について「根本原因に関する交渉が先で、停戦の話はそれからだ」と説明。協議が実現しても、戦闘は停止しないとの認識を示した。根本原因の交渉とは、ウクライナの非武装化などを指すとみられる。
米ABCニュースが10日に報じたインタビューによると、ドミトリー・ペスコフ露大統領報道官は、停戦合意には、米欧がウクライナに対する兵器供与を止めねばならないと主張した。今後の協議で、露側が要求してくる可能性がある。
一方、ゼレンスキー氏は11日夜のビデオ演説で、プーチン氏にトルコに来るよう呼びかけ、「我々はどんな形式でも交渉する用意がある」と強調した。