「今の高値水準が続く」
“切り札”になるかと思われた備蓄米の放出開始から約2カ月がたつが、相変わらずコメの「高価格」が続いている。こうなると、秋に出回る新米が価格を下げてくれる効果に期待したいところだが、どうやらその期待は裏切られ、失望することになりそうだ。専門家にコメ価格の先行きを尋ねてみると……。
【写真】韓国のスーパーで実際に売られている「コシヒカリ」。4キロで約2300円。「お持ち帰り」を呼びかける張り紙も
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今月4日までの1週間で販売されたコメの平均価格は、5キロで4214円。前週からわずかに値下がりしたものの、昨夏にコメが著しく品薄になった「令和の米騒動」以降、高止まりしたままだ。
スーパー「アキダイ」の秋葉弘道代表いわく、
「大体5キロ4000〜4500円と、昨年同時期の2倍ほどの値段で推移しています」
備蓄米の放出によってコメ価格高騰の鎮静化を図ろうとした政府の狙いは、見事な空振りとなった格好だ。消費者としては、次なる“救世主”として、今秋に出回る新米に期待を寄せるしかない。しかし、
「来年の新米が出る2026年秋ごろまでは今の高値水準が続く」
と、元農水官僚でキヤノングローバル戦略研究所研究主幹の山下一仁氏は推測する。
「一部のJA(農協)は農家が離れて集荷率が下がらないよう、高値で今年の概算金(JAが農家に提示する前払い金)を示してします。仮払い金とはいえ、後から“米価が下がったので返金を”と要求すれば、農家は来年からJAの集荷に応じない。すでに示した以上、この価格は死守するでしょう。そうなれば、卸や小売りもそれに伴った値を付けざるを得ず、米価は高止まりしたままです」
輸入拡大の効果は……
つまり今秋に新米が出回っても、価格の低下は望めないというのだ。それならばと輸入米に活路を見いだす向きもある。今月11日には、石破茂首相が日米の関税交渉に関して、コメの輸入拡大も選択肢の一つだとの認識を示した。
この点について山下氏は、
「現在の制度下では、政府は無関税で年間77万トンのコメを輸入しており、そのうち主食用米の枠は10万トン。仮に多少この枠を拡大できても、価格の下落につながらない」
民間輸入も急拡大し、今年度の輸入量は過去最高だった昨年度の20倍に達する見通しだというが、
「全体の消費量からすれば微小です。加えて、コメには1キロあたり341円と、大量に輸入するにはあまりにも高額の関税がかかる。国内の米価がさらに上昇しない限り、大きな存在感を示すことはないでしょう」(同)