追悼「世界一貧しい大統領」ホセ・ムヒカ、原発に頼る日本のエネルギー政策に疑問を投げかけ


記事のポイント ①「世界一貧しい大統領」として知られたホセ・ムヒカ氏が2025年5月14日亡くなった ②オルタナは2016年3月、ムヒカ大統領(当時)のインタビュー記事を掲載した ③インタビューでは原発に依存する日本のエネルギー政策に疑問を投げかけた

■ムヒカ氏にアポイントなしで会いに行った日本人

平井さんは2012年から2年半、地産地消を促す「ふくしまネット」の特任研究員として福島県福島市に住んでいた。放射能の影響で苦しむ生産者を間近に見てきて、福島の復興にはムヒカさんの言葉が必要だと考えた。

何のツテもなかったが、ウルグアイ大使館やムヒカ氏の秘書に手紙で思いを伝えた。なぜ日本から来たのか、何をムヒカ氏に聞きたいのか、思いを込めて手紙に書いた。

■「ムヒカ氏はマテ茶を飲みながら出迎えてくれた」

電話をかけてきたのは、ムヒカ氏のガードマン。「明日の朝なら家で休んでいるから会える。来てみろ」という内容だった。平井さんは繰り返し、私邸に通い続けていたため、ガードマンとも顔なじみになっていた。

次の日の朝、ムヒカ氏の私邸を訪ねると、ガードマンの小屋に通され、そこにムヒカ氏はいた。「マテ茶を飲みながら迎えてくれた」と話す。

インタビューの時間は1時間に及んだ。当初は30分を予定しており、取材の途中で、妻で上院議員(当時)のルシア・トポランスキー氏が「議会に行く時間よ」と止めに入ったが、「今、大切な話をしている。あとで行くから先に行っていてくれ」とスペイン語で返したという。

インタビューでは、福島県で起きた原発事故やエネルギー政策などについて聞いた。ウルグアイは欧州経済の低迷を利用し、自然エネルギーへの転換を実現した国だ。同国の電力の約9割はクリーンエネルギーでまかなっており、世界屈指のエネルギー先進国だ。

ムヒカ氏は、事故が起きるリスクがある原子力に頼ることへ疑問を投げかけた。「日本には優れた人材がいます。技術力もあり、経済力もあります。それなのに、いまだに原子力を取り入れたエネルギー政策を続け、代わりとなるエネルギーの開発に消極的な事実に驚かされます」と話した。

「ドイツは思い切った決断をしました。ましてや原爆投下を被り、広島と長崎の悲劇を経験した日本が、経済的な要素を重視し、国民の想いを考慮しないエネルギー政策を進めていることは、信じられないことです」と続けた。



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