米中貿易をめぐり、米中は共同声明で互いに関税を115%引き下げると発表。アメリカから中国への関税は30%、中国からアメリカへの関税は10%に。アメリカは相互関税の上乗せ分のうち、24%を90日間停止し、中国側も相互関税への報復措置の一部を90日間停止するという。これについて『ABEMAヒルズ』は、千葉大学客員教授で中国の政治・社会・文化などの取材を行う高口康太氏と考えた。
高口氏は前回出演時に「米中相互関税はいつまで続く?」という質問に対し、「長くは続けられない。気づいたら『ふっと妥結した』となる」と予想しており見事的中。この結果を受け、高口氏は次のように述べる。
「冷静に見ると、これ以外の選択肢はない。どちらに対しても大きなダメージがあるので、言葉だけは強いが、お互いそろそろ仲良くするしかないということだったと思う」
115%引き下げ、90日間の猶予はあるが、これは収束に向かっているのか。高口氏は次のような見解を示す。
「まだよくわからないというのが本当のところ。90日間の猶予は、日本やほかの国も同じ。一生懸命交渉しているわけだが、米中の交渉は特にハードルが高いと思う」
中国側が勝利?高口氏「アメリカがやりたいことをやっているだけ」
115%互いに下げたことに関しては中国側が勝利なのか、アメリカ側の勝利なのか。高口氏は「アメリカがやりたいことをやっているように見える」と答える。
「30%税金をかけて、90日間の交渉次第で追加関税をどれだけかけるか決めるというのは、トランプ大統領が最初からやっていたこと。4月10日の時点でこういう構図は見えていた。なので、報復関税の掛け合いで中国とアメリカが戦ってきたが、それをしなかったら4月10日の時点でこの条件になっていたと、そのままスタートラインに戻ってきただけ」
高口氏の話を受け、『ABEMAヒルズ』のコメンテーターでエコノミスト・崔真淑氏は「
合成麻薬のフェンタニルの話であるとか、現代版アヘン戦争が起きているんじゃないかという見方もあるがどう思うか」と問い、高口氏はこのように答えた。
「中国もフェンタニルはどうにかしたいと思っているはずだが、実はフェンタニル、中国から原料を輸出しているが、その原料の種類が非常に豊富で、全部規制するのは非常に難しい。アメリカ側で人が死んでいるので規制せざるを得ないが、それには大変な努力をかけて、トレーサビリティを構築して、データベースを作ることが必要なので、それこそ喧嘩している間はできない」
では、90日間の猶予というのはどう捉えたらいいのか、また中国国内での報道はどういうふうになっているのか。高口氏は次のように解説した。
「猶予をもらって嬉しいというのが中国側の反応。この90日の間にできるだけ輸出しようと、みんな釈迦力になって働いているという報道もあった。ただ裏を返せば、90日では交渉がまとまらないだろうという予測もある。実際、中国はアメリカに対して何を約束したら交渉がまとまるのか見えづらい。ただし、絶対にまとめなければいけない、非常に矛盾した状況にあって、90日以内にまとまるのか、一体どういう条件が出るのか、わからないことが多い」
中国側の対応は、第1次トランプ政権の時期と違いはあるのか。高口氏は次のように分析する。
「第1次トランプ政権の時の貿易戦争は、2018年に始まって2020年の頭に第1次合意ができるまで、2年に近い時間がかかった。関税がかかる品目がかなり狭められていたからできたこと。今回は全品目に追加関税をかける問題。いろんな項目が出てくると、この状況が長続きはできないだろうと思う。大きな違いはスピード」