【ワシントン=黒瀬悦成】米国務省は22日、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の失効を回避した日韓両政府の判断を「歓迎する」との声明を発表した。声明は「米国は、国防と安全保障の問題は日韓関係の他の分野と区別されるべきだと強く信じる」と訴える一方、日韓両政府に「歴史問題の解決に向けた誠実な対話」を促した。
トランプ政権は、失効は「北東アジアの安全保障環境を脅かしている北朝鮮と中国を利するだけだ」(エスパー国防長官)とし、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領らに対して失効を回避するようぎりぎりまで求めていた。
米議会も危機感を強めていた。上院は21日、GSOMIAの重要性を訴える超党派の決議案を全会一致で可決した。決議は、GSOMIAが北朝鮮の核とミサイルの脅威などに対抗するために「死活的に重要」であると強調する一方、日韓両政府に「信頼関係の再構築」を訴えていた。
トランプ政権は、日韓など同盟諸国に対し、国防費増額や駐留米軍経費の負担増などを通じて自国の防衛に一層の責任を負わせようとする一方、地域の同盟・パートナー諸国同士による連携強化を通じた安全保障協力のネットワーク網の構築を進めている。
トランプ政権にとって最大の懸念の一つは、北朝鮮の弾道ミサイルの脅威が確実に増大していることだ。北朝鮮は、韓国が日本にGSOMIA破棄決定を通告した翌日の8月24日の弾道ミサイル発射を手始めに、この数カ月間、日米韓の情報共有体制を試すように発射を繰り返した。
米政策研究機関「ランド研究所」のスコット・ハロルド研究員はGSOMIAが破棄されれば、「北朝鮮から『弱さ』の印であると受け止められる恐れがある」と警告していた。