飼っている動物が病気になったら、動物病院に連れていきますよね。動物病院には外科、内科、眼科など、さまざまな専門領域の獣医師がいますが、獣医病理医という獣医師がいることを知っていますか?
この記事では、獣医病理医の中村進一氏がこれまでさまざまな動物の病気や死と向き合ってきた中で、印象的だったエピソードをご紹介します。
病理解剖は、物言わぬ動物たちの遺体から「メッセージ」を読み取る行為です。病理解剖を行うことで、必ずしもすべてではありませんが、その動物が死に至るまでの経緯や、病気とどのように闘ってきたかを知ることができます。
■突然倒れて呼吸困難に
突然倒れて呼吸困難に陥り、そのまま亡くなった10歳のバーニーズ・マウンテン・ドッグ。その心臓の中から出てきたのは、おびただしい数の「生き物」でした。
まるで「そうめん」のような色・形・大きさの虫が、心臓の中に十数本とぐろを巻き、うごめいていたのです。
【写真で見る】うごめいている虫の正体――(こちらをご覧ください)
「1年ほど前から咳をするようになって、最近は散歩もしぶるようになっていたんだけど。年のせいだろうと思って、結局、動物病院には連れていかなかったんだよね」と、愛犬の遺体を抱えてこられた飼い主さんは語りました。
一般的にバーニーズ・マウンテン・ドッグの平均寿命は7〜11年です。たしかに10歳は高齢といえる年齢です。
しかし、病理解剖を進めていくなかで見つかったのは、半分以上が腫瘍に侵された肺と、心臓の中でとぐろを巻く無数の生き物。イヌを飼っている方はご存じでしょうが、イヌにとっての天敵である、フィラリア(犬糸状虫)です。
■成虫は体長20〜30センチにもなる
フィラリアは蚊によって媒介される寄生虫で、成虫になると体長20〜30cmにもなります(写真 ※外部配信先では写真を閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)。